緑のお医者の徒然植物記

Translate

緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2020/09/20

ヤブツバキ No,280

ヤブツバキ 「藪椿」ツバキ科

常緑中高木

日本の照葉木を代表する樹木の1つで、主に東北地方以西の海沿いの地域や、山地に幅広く自生します。




単に「ツバキ」と呼ばれることも多く、多くの園芸品種もこのヤブツバキが基本種となっています。

古代人は冬から早春にかけて開花する貴重な花木であり、常緑の葉に神秘性を感じ、仁徳天皇の昔から神聖な木として、宮中を中心に重用されてきました。

古事記では「都婆岐」日本書記では「海石榴」の表記で登場します。

ツバキの名称は「光沢(こうたく)がある」の古語である「つば」が変化したとする説と「艶葉木」=つやばきが転訛したとする説、「厚葉木」=あつばきが転訛したとするものなど諸説があります。

いずれも光沢のある厚手の葉を名前の由来としています。

11月から4月にかけて咲く花は5弁花ですが、基部がくっついていて盃状に咲くのが特徴です。

そのため落花する時は花ごと落ちます。

夏から秋に咲く花木は、主に昆虫が花粉を媒介する「虫媒花」ですが、ヤブツバキをはじめ昆虫がほとんどいない冬場に咲く花は、メジロなどの小鳥が花粉を媒介する鳥媒花」です。




一般に鳥媒花には、ヤブツバキの赤色のように鮮やかな色のものが多く、これは嗅覚(きゅうかく)の発達していない鳥類に対し、視覚で訴えているためと言われています。

また、昆虫を遠ざけるためとする説もある。

✪鳥媒花(ちょうばいか)とは、ツバキやサザンカのように冬に咲く花は、花粉をメジロやヒヨドリなどの鳥に運んでもらって受粉する花です。

体の大きな鳥を呼ぶために、ツバキは多量の密を分泌するようです。


多雪地帯に自生する「ユキツバキ」はヤブツバキから分化したものと言われ、降雪に耐えるように枝が、地を這うように低く広がる特徴がある。

耐寒性、耐暑性、耐潮性が共に極めて強い事から、公園、庭園樹として幅広く利用されている。

木材は堅く建材や器具、彫刻材として用いられる他、油分を多く含む種子からは「ツバキ油」が採れ、灯明、薬、化粧品などに幅広く利用されている。

その他の利用として、長崎県五島列島の名産「五島うどん」には、ツバキ油が使われていて、日本三大うどんとされ、幻のうどんと言われる。

五島うどんの歴史は最も古い、しかし、離島で在る事もあって昔々から伝わりにくい状態であった為、全国にあまり知られなかったと言う歴史がある。




五島うどんの発祥地は、旧上五島の船崎と言う部落で、中国より伝わったとされる。

現在でもこの地には、製麺所(犬塚製麺)がある。

ツバキは交雑種が作りやすく、品種改良が容易な事から、園芸品種は非常に多くその数は、一万種以上あると言われています。

18世紀には、チェコスロバキアの「宣教師で植物学者でもある、ゲオルグ·ジョセフ·カメル」によって、ヨーロッパに紹介され、以来カメルの名に因んで「カメリア」の名で欧米でも大流行しました。

ヤブツバキの学名はカメリア·ジャポニカで、西洋では椿の事を「カメリア」と呼びます。

椿油は世界的には「カメリアオイル」と言われています。

このカメリアオイルは世界三大オイルの1つで、ツバキ科ツバキ属の植物から取れる油で、日本原産のヤブツバキから採取される椿油は、カメリアオイルの一種と言えます。

世界で流通しているカメリアオイルの多くは、中国などアジアに広く分布するツバキ属の、チャノキやユチャ等の実から搾られる植物油と言われています。


◉生育環境
元来は暖地性ですが、耐寒性が強く、青森県まで露地植えが可能です。

日陰にもよく耐えますが、半日陰から日当たりくらいの環境下が最適です。

腐植質に富んだ排水性、保湿性ともによい肥沃な土地を好みます。

◆植え付け、植え替え
4月から6月中旬か9月が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥をよくすき込んで高植えにします。

◉肥料
通常の庭土であれば特に必要ありません。

花つきが良くない場合は、油粕、粒状化成肥料を等量混ぜたものを、株の大きさに応じて春先と秋口に与えます。

◆病害虫
ツバキ科の植物は、チャドクガが4月と7月頃に発生しやすい傾向にあります。

被害が大きい場合は5月頃から8月の発生期に、ディプテレックス、スミチオン、DDVPなどの薬剤を散布します。

チャドクガは毒毛を持ち、触れるだけでなく近寄っても「かぶれ」るので、捕殺するのは適当ではありません。

駆除はなるべく薬剤で行うようにしましょう。

ツバキ類の葉が黄色く見えたら、チャドクガの毛虫がいるかも知れません。

注意して葉の裏側を見ましょう。

◉せん定
ヤブツバキは幹が一本真っ直ぐ上に伸びる立性『たちしょう)です。

生育が遅く、枝も極端に伸びないので、自然樹形で楽しむ事ができます。

刈り込みに強いので玉散らしや円筒形、円錐形などの仕立てものにする事もできます。

基本的なせん定は、徒長枝や弱い枝、込み枝を切ります。

特に樹冠内の枝が密生し過ぎると日照、通風が悪くなるので、込み枝は必ず透かすようにせん定します。

花芽は6月から7月に、伸びが止まった新梢の先端につきます。

翌年春にその位置で開花します。

花期は品種により多少異なりますが、せん定の時期は花の咲き終わった直後3月から4月にかけて行います。

せん定後に伸びた新梢に花芽をつける事になるので、この時期(3月~4月)ならかなり思いきったせん定も可能です。

新梢の伸びが止まった、6月から7月の間に軽くせん定する場合は、すでに花芽が出来ているので注意して、樹形を乱す伸びすぎた枝を切り詰める程度にします。

花の咲いた枝を切る場合は、枝分かれしている所から葉を、2~3枚残して上部を切り詰めます。

この様なせん定を毎年花後に行えば、常に一定の樹形を保ち、花を犠牲にすることも無いでしょう。

尚、花後に結実するとその後の樹勢に影響を与えるので、実は早めに切り取ります。

★殖やし方
実生は秋に熟した種子を採り蒔きにします。

挿し木は固まりかけた新梢を、10~15㎝程に切り挿し穂とし、鹿沼土や赤玉土小粒のさし床に挿します。
時期は7月から8月

接ぎ木は3月から4月頃に行う。










2020/09/19

モチノキ No,279

モチノキ モチノキ科 黐の木

原産地=本州の東北地方以南、四国、九州、朝鮮半島

モチと言う名前は、粘り気の強い反面樹液に由来し、樹皮から鳥もちを取るのでこの名がある。

樹皮をすりつぶしたり、突いたりすると、鳥もちになる。

最初は皮を金づちなどで叩いて柔らかくしてから、摺り潰するとトリモチにしやすい。


それを細枝などに巻き付けて、鳥が停まりそうな場所に設置して鳥を捕らえる。

設置する場合は、停まりそうな場所をよく観察して設置する。

ただし、捕獲禁止野鳥もいるので要注意!

昔々は、野生のメジロなど小鳥を捕獲するためにトリモチが利用されました。

昔話にも「トリモチ」の名で登場するほど、日本では古くから親しまれてきた樹木です。

関東の中部以西の山野や、沿海の山地に広く自生しますが、東北地方の南部まで植栽できます。

海岸付近では防風、防潮樹として植えられていることもあります。

耐寒性が少し弱いが関東以西ではよく育つモチノキは生育度合いが鈍く、さほど手入れに手間がかからない樹で、強いせん定にもよく耐えるので管理しやすい。

ただし、仕立てものにするには、年数がかかりすぎる難点があります。

大気汚染にも強く、大型の樹木の割には根が浅いため、移植が容易である。

都市部の庭にも適した樹木と言えるでしょう。

また、葉の形状がよく似た「カナメモチ」は別種です。

◉生育環境
日当たりがよく肥沃な土壌を好みます。

比較的根が浅いので、保湿性を維持する事が重要になります。

ローム質の土壌に育てている場合は、赤玉土や腐葉土などを半分程度混ぜ、土壌改良を行う。

新たに植え付ける時は、植え穴を大きめに掘り、完熟堆肥を植え土に半分くらい混ぜて、水ぎめ法で行います。

◆水ぎめ法
植え穴に水と土を交互に入れながら植え付ける植え込み方法で、この方法は根の切り口が腐りやすい樹種、針葉樹には向いていません。

根付くまでの2~3年程は、強風などによる倒壊を避けるために、支柱を立てて保護しておくとよいでしょう。

根の活動が盛んな4月から9月頃までが、植え付け、移植の適期です。

◆病害虫
カイガラムシがよく発生します。
見つけ次第捕殺することになりますが、毎年頻繁に発生する場合は、予防を兼ねて冬期(1~2月)にマシン油乳剤の40~50倍液を2回程度散布します。

害虫の発生しやすい春から秋には、スミチオン1000倍液やオルトラン水和剤1000倍液で害虫を退治します。

◉せん定
6月~7月にかけて比較的よく枝が伸びます。

現在の樹形を維持する場合は、この時期に枝を切り詰めると、真夏期はさほど生長しないため管理が楽になります。

真夏にせん定すると枝や幹への負担が増し、枝から新たに芽吹かなくなる場合があるので避けましょう。

せん定を行う場合は、春に伸びた枝の付け根から、2~3葉程度を残して先を切り詰めます。

これを「三葉手入れ」といい、葉を残すことで再び枝先に新しい枝葉が密生し、良い姿に整います。

その後、切った箇所付近から夏芽が出て枝になります。

夏枝は途中で生長が止まり、節間が詰まるため枝先が密集して、樹冠を美しく見せる事ができます。

樹冠が大きくなった樹木は、6月~7月に基本形に沿って、一回り小さく刈り込みバサミで刈り揃えていきます。

大枝を切り取る場合は、冬場に行うようにしましょう。

秋の後半から12月にかけて、元気よく伸びた枝の2~3芽を残して切り詰め、樹形を乱さないように仕立てます。

◉肥料
強い刈り込みを行う場合は、樹木の基礎体力を維持するために、春先か秋口に施肥を行うとよいでしょう。

油粕と有機肥料を等量混ぜ、樹の大きさに応じて幹元に与えます。

生育中の場合は、2月と8月下旬から9月の間に、油粕に骨粉を混ぜて根元に埋め込むようにして与えます。

成木では春と秋の2回、少量の化成肥料をばら蒔きする程度で十分です。

◆殖やし方
実生の場合は、11月に結実した種子を水洗いして、赤玉土など肥沃な床に蒔くか、採取した種子を冷蔵庫に春先まで保存して、3月上旬に同じく肥沃な床に蒔きます。

挿し木の場合は、6月~7月が適期で、今年伸びた枝を15~20㎝の長さに切り取り、親木の育つ土壌に赤玉土を半分程度混ぜた土に挿して生育します。







バーベナ No,278

バーベナ クマツヅラ科  

別名=ビジョザクラ 1年草または宿根草

主に南北アメリカの熱帯から亜熱帯に分布しています。

約250の野生種があり、日本にも「クマツヅラ」1種が自生しています。

ひと昔前は冷涼な気候のヨーロッパで、改良された品種が多く、日本ではうどん粉病が出たり、高温多湿の夏に傷んだりといった問題がありました。

その後、丈夫で育てやすい品種が登場したため、今ではガーデニング素材として人気の高い草花です。




サクラに似た小花をつけるバーベナは、多種多様な園芸品種があり、立ち性、ほふく性、高性の3タイプに大別できます。

花色は赤、白、桃、紫など一般に栽培されているのは、「ビジョザクラ」と言う品種と、「宿根バーベナ」と呼ばれる品種です。

「ビジョザクラ」は暑さ、寒さに弱く、そのため秋蒔きの1年草として栽培されています。

一方、「宿根バーベナ」は暑さ、寒さに比較的強く、花色が豊富で丈夫な性質なので、コンテナや花壇などのグラウンドカバーとして人気があります。

葉の細かい切れ込みが、宿根バーベナの特徴です。

◉生育環境
日当たり、風通しの良い所で育てます。

★宿根バーベナは丈夫ですが、日当たりが不足すると、花つきが悪くなり茎葉が枯れてしまうので、室内栽培には向きません。

花が咲かなくなるのは、日光不足や過湿、乾燥、根詰まりなどが原因です。

水はけの良い用土に植え替え、伸びすぎた茎は切り詰めて回復を促します。

回復したら日当たりと風通しの良い場所に移します。

★ビジョザクラは、30度以上の高温が続くと、株が弱って花つきも悪くなります。

夏の高温期には、風通しがよく半日陰の涼しい場所で、管理する事が大切です。



◉植え付け、植え替え
※宿根バーベナの植え付けは4月下旬が適期です。

※ビジョザクラの植え付けは5月下旬が適期です。

植え付けは、一回り大きな鉢に水はけの良い用土で植え替えます。

酸性土壌を嫌うので、用土に酸度未調整のピートモスが入ってる場合は、石灰を加え元肥とし、暖効性化成肥料を1㍑当たり5㌘程混ぜておきます。

水やりは、乾燥に強い反面、多湿を苦手とするので、土の表面が乾いてから水を与えます。

ただし、あまり乾かし過ぎると、葉色が薄くなって内側に葉を巻き始め、茎がうなだれてしまいます。

★宿根バーベナは春か秋に植え替える時、株分けで株を更新できます。

ロックガーデンやハイキングバスケットに植えると、垂れ下がった枝先に咲く花が素敵です。

秋にうどん粉病が出ることがあるので、水はけの良い土を用いて植え、多湿に注意して管理します。

適切に管理すれば、春から秋、霜が降りる頃まで咲き続けます。

◉せん定
自然風の花壇に仕立てたい場合は、切り戻さなくても構いませんが、バーベナは生育旺盛なので、コンテナのように限られた空間では、植え付け後4ヶ月程で根がいっぱいに張ってしまいます。

8月下旬頃に切り戻しを行って株を更新させます。
切り戻すことにより、株元近くからわき芽が伸びてまとまった形に茂り、9月中旬頃には再び多数の花が咲き始めます。

コンテナも花壇も花を長く楽しむために、こまめに花柄摘みを行います。

◉肥料
切り戻し後は、暖効性化成肥料を1平方㍍当たり100㌘程施します。

植え替える必要はありません。
開花期間が長いので、月に1~2回薄い液肥を与えるとか、2ヶ月に1回程固形肥料を与えます。

◉殖やし方
種蒔きは春蒔き、秋蒔きが可能で春は4月、秋は9月中旬頃が適期です。

市販の種蒔き用土を利用して、平鉢や育苗箱などに蒔きます。
半日陰に置き管理します。

2週間程で発芽します。
本葉2~3枚で9㎝ポット(3号)に移します。

挿し木は春、又は秋に元気のいい枝を選んで10㎝程切り取り、赤玉土とパーライトの等量混合土に挿し、風通しの良い半日陰で管理します。

2~3週間で発根し、1~1ヶ月半後には鉢あげできます。
秋に挿し木して小苗を作れば、冬越しに便利です。







2020/09/18

ヒメシャラ No.277

ヒメシャラ ツバキ科 姫沙羅

別名=サルタノキ、ヤマチシャ 落葉高木

原産地=日本

本州中部以南の、標高600~800㍍の山地に分布しています。

よく似た「夏ツバキ」より花の小さいヒメシャラは庭の主木として、又は公園で林を造るようにすると美しさが引き立ちます。

「姫沙羅」と言う名は、シャラ(夏ツバキの別名)より、樹高も花の直径も小ぶりだったため、「姫」を付けて呼ばれるようになったのが由来です。

ヒメシャラは、夏ツバキよりも寒さに弱く、北は関東地方から南は九州までの地域が、庭植えの適地になります。

やや湿り気のある肥沃な土地を好みます。

明るい褐色の滑らかな幹肌は、老木になると樹皮が薄く剥がれ落ち、まだら模様を作ります。

ヒメシャラよりも少し早い時期に、まだら模様になる夏ツバキは、樹皮の赤みが強いので区別できます。

樹皮が剥がれ落ちると、若木のヒメシャラは赤褐色、古木になると灰白色になります

若いうちは枝にも毛がありしなやかに屈折します。

幹の質はすべすべして堅く、木材として柱、火鉢などの材料にも用いられます。

あまりにもすべすべとしているので、サルスベリと呼ばれる。



葉は秋に黄褐色に色づく。

6月~7月頃、その年に伸びた1年枝に直径2㎝程の白い花が一花つく。

小ぶりで涼しげな花は、夏の茶席の花として利用される。

花は花弁の外側に細かい毛が密生しています。

9月から11月には木質で絹毛が生え、先が尖った長さ15ミリ程の果実がつきます。

果実は朔果(さくか)で熟すと、5つに裂けて翼のある果皮が乾燥して、基部から上に向かって裂け種子が出る。

種子を採取するときはこれを取ります。

その後黄葉して散ります。




◆生育環境
 暖地に適していますが、夏にあまり高温多湿になる土地であれば、日陰を選んで植え付けます。

西日の当たる場所は避けます。

◉植え付け
11月から翌年3月に一年生苗を入手し、日当たりと水はけのよい砂質土に、大きな穴を掘り、穴の中に腐葉土を多めに入れて埋め戻します。

そこに苗の根土ごと植え付け、水やりをします。

その後は、1月から2月に堆肥、鶏ふん、油粕などを混ぜた、肥料を根の周辺に埋めます。

◆病害虫
比較的丈夫で手間のかからない花木ですが、病害虫には注意が必要です。

風通しをよくし、1月から2月に石灰硫黄合剤10倍液を散布して、病害虫を防ぎます。

新芽や葉に白い粉のようなカビがつく「うどん粉病」を見つけたら、早めにダイセンやベンレートなどの薬剤を散布して駆除します。

アブラムシやツバキ科に発生しやすい「チャドクガ」にも注意が必要です。

秋から春、チャドクガの卵や幼虫を見つけたら、枝ごと取り除くか薬剤を使って駆除します。

薬剤はスミチオン、ディプテレックス、DDVP等。

◉せん定
基本的には枯れ枝を取り除く程度でよく、せん定の必要がない樹木です。

高さや幅が希望より大きくなり過ぎたら、11月から2月の落葉期に、切り詰めずに長い枝を選んで間引きます。

◆殖やし方
秋にはじけた種を採取して、貯蔵し翌年3月に種蒔きします。

ゴロ土と赤玉土小粒7、腐葉土3の混合土を入れ、種子をばら蒔き薄く土をかぶせます。

発芽したら、双葉のうちから間引き、良い苗を残して苗間をあけます。

※挿し木でもできますが、やや困難です。






2020/09/17

ネムノキ No,275

ネムノキ (合歓木)マメ科 落葉樹
原産地=中国
別名=アサネゴロ、コウカ、ウシノモチ

夜になると葉は両側から合わさり、眠ったような姿になるのでこの名がある。

北海道を除く全国の原野や川辺などに自生する、日本の代表的な樹種のひとつです。

朝鮮、中国、台湾、東南アジアにも自生しています。

万葉の昔より「ねぶ」の名で親しまれている。

枝が横に広がるので真夏の緑陰樹木に適し、庭木としても用いるほか、学校や公園樹としても広く利用されています。

本来は暖地性の植物ですが、耐寒性は強く、北海道南部まで庭植えが可能です。

日本では古くから農村の風景に欠かせない雑木として広く植えられてきました。

放任すると10㍍を超える大木になりますが、小ぶりに仕立てて鉢植えで楽しむこともできます。

マメ科の植物は、蝶形の花を咲かせるものがほとんどですが、ネムノキは紅をさした★刷毛(はけ)のようなフワッとした花を咲かせます。

★刷毛=塗料などを塗る道具

3㍍程に生長すると花を咲かせます。

花は夏の夕方に咲き、丸いつぼみから短時間のうちに多数の雄しべが伸びてくる。

甘い香りがして朝には萎れてしまいます。

花は6月中旬頃から8月にかけて、断続的に咲き続けます。

刷毛のような花に見えるのは、長い雄しべで、筒状の5弁の花びらはとても小さく、よく見ないとほとんど気づきません。

夕方に開き朝にしぼむ花と、反対に葉は夕方になると閉じ、夜明けとともに開きます。

この現象は「就眠運動」と呼ばれるメカニズムによります。

ネムノキの葉は、小さい葉が鳥の羽根状になり、それが集まって大きな葉となっています。 

これを二回羽状複葉と言います。

この小葉の付け根部分に葉枕と呼ばれる膨らみがあり、内部の水分の圧力(膨力)が昼夜の温度差で変化するため、葉が開閉するのです。

★ハリエンジュ(ニセアカシア)を俗に「アカシア」と称される事が多く園芸店では混同を避けて、「ミモザ」と呼ぶのが一般的です。

海外では「ネムノキ」属名も「ミモザ」と言い、いずれも30~40の二回羽状複葉をつける共通点が名前と関係しているようである。★



                         「ネムノキの花」


触ると急激に葉が閉じる「オジギソウ」も同じ葉の構造を持つマメ科の植物ですが、ネムノキは時間をかけて、葉をゆっくりと開閉します。

ネムノキの樹皮には「タンニン」が含まれていて、民間療法で打撲傷に塗布したり、駆虫剤に用いる他、樹皮と花を含めて睡眠、精神安定剤として用いられます。

夏の暑い日に、肌着(肌)の中に直接ネムノキの葉を忍ばせると、熱冷ましとして活用できる。

ネムノキ属の仲間は世界で130種が確認されている。

日本でもネムノキを含めて3種が自生しています。

◉園芸品種
白色花をつけるシロバナネム

鮮紅色の花が咲くヒネム

50~60㎝の高さでピンクの花が開花する1才ネムなどがある。

★ネムノキは他のマメ科とやや趣きが異なる。

ニセアカシアの仲間とともにマメ科から切り離して、ネムノキ科とする説もあります。

◉生育環境
樹勢が強く、痩せ地でも比較的よく育ちますが、日当たりと水はけのよい肥沃な場所が理想的です。

日当たりをよく好む樹木なので、日陰には植えないようにします。

日光を好みますが、乾燥を嫌うので土壌水分は多めの土地が適しています。

枝がかなり横に広がるので混植は避け、庭植えの場合は、かなり広いスペースが必要になります。

◉植え付け、移植
細い根が少ないのであまり移植には強くありません。

植え付け後は乾燥に十分注意して管理します。

苗の購入時には、できるだけ根の多いものを、出来れば鉢植えのものを植え付けるのが理想的です。

根がよく張らないうちは、乾燥すると枯れ込む場合があります。

植え付け、植え替えの適期は3月頃から4月頃です。

◆肥料
植え付け時に元肥として、完熟堆肥などの有機肥料を十分にすき込みましょう。

病害虫の心配はほとんどないでしょう。

◉せん定
萌芽力があまり強くないので、強いせん定は避け、基本的には自然樹形を保ちます。

太い枝で小枝のない部分で切ると枯れ込むので、そばに枝のある所で切って樹形を整えます。

若木のうちはある程度切り込んでも大丈夫なので、早い段階で樹高を決めるようにします。

★殖やし方
秋に豆果のサヤが淡褐色に熟したら、早めに採種して採り蒔きする。

採種が遅れると虫害を受けやすく、発芽できなくなります。

発芽までに1年から2年を要します。






2020/09/16

キンモクセイ No,274

キンモクセイ モクセイ科 常緑広葉樹

原産地=中国

秋に黄色い花を咲かせる「キンモクセイ」と白花の「ギンモクセイ」とがあり、ともに甘いよい香りを漂わせ、庭木として人気がある。

放任しておくと5㍍から7㍍の大木になるので、植え付けて毎年刈り込みをして育てます。

単植の円筒形仕立てや生け垣にもなる。

雌雄異株で、日本には雄株が多く結実しない。

日当たりのよい、肥沃な土地がよく日陰にも比較的強いが、花つきが悪くなる。

東北地方の南部ぐらいまで植栽可能、ふつうの庭であればとくに土質は選びませんが、乾燥しやすく痩せている土地の場合では、堆肥や腐葉土をすき込む必要があります。





◉植え付け
4月から5月が適期です。
成木の場合は5月か7月から9月が適しています。

移植の場合は、前年に根回しをし、小根を発生させ、枝を少し切り詰めて準備をしておきます。

移植した時は、十分に水を与え、背の高い木は支柱をします。

◉肥料
樹勢の強い樹木ですから、肥料を与えすぎない方がよいのですが、花をよくつけるには、チッソ分の少ないリン酸カリ分の多い化成肥料を、3月に根元にばら蒔き、また花後に株回りに穴を掘り鶏ふんを埋め込む程度にします。

肥料の主成分のひとつであるリン酸は、主に花の開花と充実に効果があります。

モクセイのような庭木であっても、同時に花を楽しめる樹種の場合は、リン酸の成分の多い肥料を与えると、効果が大きくなります。

◉せん定
放任すると大きくなり過ぎるので、若木のうちから刈り込みをして樹形を作りながら育てましょう。

そのためには、高さを決めて芯を止め、木のバランスを考えて徒長枝をこまめに切ります。

花芽がつくのは7月頃で、春に伸びてくる枝につきます。

花を楽しむには花芽形成期から開花期の9月から10月までせん定は避けましょう。

◆害虫
風通しの悪い所などでカイガラムシが発生する。

夏の高温期にハダニも発生しやすい。

カイガラムシは混み合った枝や葉につきやすいので、よく観察しましょう。

ハダニは葉の裏側に寄生して、養分を吸います。

葉の緑色が失せて、次第に白っぽくなり、木全体の勢いが無くなり、葉がカスリ状になる。

夏の高温期に発生が目立つので早めに退治しましょう。

ハダニ類は肉眼では発見しにくいので、葉の色などで判断するのもひとつの方法です。

★予防と対策
枝葉が混み合わないようにして、風通しと日当たりをよくします。

カイガラムシには、冬期に機械油乳剤30倍液を2~3回散布して予防し、発生が見られる夏から秋にかけては、スミチオン乳剤1000倍液とオルトラン水和剤1000倍液を交互に散布して、虫の抵抗力を弱め、殺虫効果を上げるようにします。

この場合の散布は月に2~3回行います。

薬剤散布は、風上から行い、マスクなどで防護することも忘れないようにしましょう。

日中の日差しが強い時の散布は避けましょう。

早朝か、夕方の日暮れ前を中心に散布を行うようにし、できるだけ薬害を避けましょう。

※機械油乳剤剤は薬害に注意する必要があるため、冬期に使用しましょう。

ハダニは強い雨などに弱いので、時々ホースで葉に水をかけてやると、発生を抑える事ができます。

ハダニの被害が確認できたら、専用の殺ダニ剤を葉の裏を中心に散布します。