アルミニウムの毒性
アルミニウム毒性は、植物細胞の複数の過程を阻害することが知られています。
阻害作用は様々であるが、どの作用が生育阻害の引き金になるのかは明らかになっていない。
アルミニウムに対する感受性は植物種や品種によって大きく異なるが、一部の植物は酸性土壌を克服するため、様々なアルミニウム耐性機構を発達させている。
その耐性戦略は2種類に大別される。
①1つは、根から根圏へ有機酸を分泌し、根圏でアルミニウムをキレートして無毒化する戦略である。
❉キレートとは、クエン酸の作用のこと
❉根圏(こんけん)とは、植物体の根とその影響を受ける土壌中微生物の活動などによって作られる、極めて根に近い範囲を指す。
植物体を維持するための土壌空間である。
分泌する有機酸の種類は、植物種ごとに異なる。
植物のモデル生物として有名なシロイヌナズナ、アブラナ科の一年草(ペンペン草の仲間)はリンゴ酸とクエン酸を分泌する。
イネ科の作物の中では、小麦はリンゴ酸をそしてイネ、大麦、トウモロコシはクエン酸を分泌する。
ライ麦はリンゴ酸とクエン酸の両方を分泌する。
また、蕎麦など一部の植物はアルミニウムに応答して、硝酸を分泌する。
❉硝酸(しょうさん)は無色透明の腐食性の強い有害な液体。
❄リンゴ酸はオキシコハク酸ともいわれ、和名はリンゴから見つかったことに由来する。
ヒドロキシ酸に分類される有機化合物の一種、アルファヒドロキシ酸(AHA)はフルーツ酸などと表記されることもある。
ヒドロキシ酸は、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの総称である。
クエン酸は柑橘類、梅干しなどに含まれている酸味成分の有機化合物。
②もう一つの戦略は、植物体内での耐性機構である。
細胞内に侵入したアルミニウムを液胞に隔離し、有機酸で「キレート」するなどして無害化する。
アジサイなどの一部の耐性植物は、積極的にアルミニウムを吸収し、地上部へと「転流」して蓄積する「アルミニウム集積植物」であることが知られています。
❉転流とは養分の移動(長、短距離輸送)のこと
篩部(しぶ)における転流には明確な方向性があり、転流の出発点を「ソース」到達点を「シンク」と呼ぶが、成熟した葉で光合成をして生育途中の葉に光合成産物を送っている場合では「成熟葉がソース」「未熟葉がシンク」と例えることができる。
◉篩部(しぶ)とは、植物の維管束を形成する、篩管を中心とする部分。
維管束(いかんそく)はシダ植物と種子植物にあって、篩部と木部からなり、道管、仮道管、篩管などを含む組織の集まり。
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No,606
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