緑のお医者の徒然植物記

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2020/05/10

カリン(花梨) No.210

カリン バラ科ボケ属

中国山東省以南の原産

梨の原種といわれ、カラナシ、キボケなどの別名がある。

日本に渡来した時期は明確ではありませんが、遣唐使として唐に渡った空海が、9世紀初頭に数本のカリンの苗木を持ち帰ったと言う記録が残っています。

古い寺院にはカリンの大木がある所が少なくありません。

中国では、二千年以上前から輪切りにして干したカリンの実は、せき止めの漢方薬として使っており、日本にもせき止め、風邪、疲労回復に効果のある薬用植物として珍重されました。

東北地方や甲信越地方で多く栽培されている。

4月から5月に淡紅色の5弁花をつけ、秋に10~20㎝にもなる洋梨に似た、楕円形の果実が黄熟するが、実が硬く渋味が強いので生では食べられません。

香りを生かして、ジャム、ゼリー、砂糖漬け、カリン酒などに利用します。

近縁種のマルメロも果実をジャムなどに加工する他、庭木として利用されています。

カリンの自然樹形はほぼ直立して生長するのに対し、マルメロは横に広がる樹形なので、簡単に見分けがつきます。

尚、建築材や高級家具材として知られるカリンは、東南アジア原産のマメ科シタン属の樹木でまったくの別種です。

反対に、漢方薬でボケ(木瓜)と言われているのはカリンのことです。

寒さに強い樹種で、夏の酷暑は比較的苦手です。

果実が大きいことから、落果の危険があるので風当たりの強い場所には適しません。



◉病害虫

※赤星病
バラ科植物に多いサビ病の一種
水和イオウ剤などの殺菌剤で対処します。

※アブラムシ
スミチオン乳剤などの殺虫剤を散布

※カイガラムシ
休眠期(冬期)に石灰硫黄合剤を散布

◆剪定

枝が混まないように間引き剪定を主とする。

果実を多く収穫するには、長い枝を半分から3分の2くらいに切り取り、短枝を出させるようにします。

カリンは花芽が動き出すのが早いので、剪定は12月下旬から2月中旬くらいにまでには、済ませるようにします。

花芽は7月から8月に30㎝以下の枝の頂部と、それに次ぐわき芽に形成されます。

花芽はそのまま越冬しますので、伸び過ぎた枝以外の切り戻し剪定は避けましょう。

花芽を切り取ってしまうことになります。

★植え付け

植え付けは12月から3月に行います。

植え付け穴は大きめに掘り、腐葉土と堆肥を多めに埋め込み、水はけと保水性をよくして乾燥を防ぐことが大切です。

◈鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え日当たりのよい場所に置きます。

※結実までの目安
接ぎ木の1~2年生の苗を植えて、鉢植えで3~4年
庭植えで4~5年で結実する。
実生苗では5年~8年を要する。




◉肥料(施肥)

元肥には実をよくつけるために、鶏ふんとリン酸カリ肥料を主として、冬期の12月から2月に株回りに埋め込みます。

チッソ分は与えないようにします。

鉢植えは毎年3月、玉肥を3~4個置き肥します。

★カリンの殖やし方

実生、接ぎ木で殖やします。
実生は、秋に熟した果実を割って種子を取り出し、庭の隅など日陰か半日陰に作ったまき床に、まいて管理します。

翌春には発芽しますが、開花、結実するまでには数年を要します。

接ぎ木は早春の2月頃に行います。

◆果実の管理

小さい果実や形の悪いものを摘果し、5月中旬に袋をかけてやると病気や害虫防除に効果的です。

果実を食害するシンクイムシには注意しましょう。

実がなりはじめたら形の良いものに袋かけをし、害虫から実を守ります。

◉カリン酒(マルメロ酒)

◈カリン1㎏
◈砂糖200㌘
◈原酒1.8㍑
6ヶ月でカリンを取り出します。
取り出した果実は砂糖で煮つめて、せき止めの薬にしてみてはいかがでしょう。