緑のお医者の徒然植物記

Translate

緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2020/05/20

常緑樹のせん定について No.221

常緑樹の基本せん定

常緑樹は、寒さに弱いので冬期のせん定は避けることが原則です。

冬は、ほとんどの常緑樹が休眠しているように見えますが、落葉樹の休眠とは違い、常緑樹は仮眠状態にあたります。

葉、幹、枝とも気温や日照時間、地温などの外的刺激を受けて、わずかな活動を続け、体内的にはホルモンなどの働きで、春の芽吹きの準備をしています。

春は芽を伸ばし、あるいは花を咲かせ、体内に蓄えた養分を少しずつ溶かして、消費して行きます。

初夏は葉もしっかり充実し始め、古くなった葉を落とす時期でもあります。

夏は花木の多くが花芽を作る時期にあたり、種子ができる時期と重なる樹も多いようです。

夏から秋にかけては、養分の貯蔵期で、消費する養分よりも製造する方が多くなり、また根も盛んに伸び活動する時期にあたります。

秋から冬は寒さに向かい、養分を幹や根の方に送り込み休眠(仮眠)状態に向かいます。

※ただし、一部の樹は花を咲かせ、種子をつける時期でもあります。

◉活動期間(4月から10月)

この間にせん定を行えば、常に緑を保てます。
この期間は、常緑樹は生長を続けるので、葉が無くなることはありません。


◉休眠期(11月から3月)

この間のせん定は、ハサミを入れる時期と位置によっては、緑を失うことにもなりかねません、従って危険性は大です。

しかも常緑樹は耐寒性に弱く、枝葉が少なくなると寒害を受ける場合があります。

この事から、常緑樹のせん定の適期は、広い意味では
4月から10月までが安全期と言うわけです。

冬の間はできるだけせん定を避け、行う場合でも枯れ枝や徒長枝、古葉を取る程度の軽いせん定に止めます。

◆樹形を観賞する樹木は7月、9月にせん定

4月から10月の活動期間の中で、6月下旬から
7月、及び9月が安定期にあたります。

それ以外の時期は、生長が旺盛でハサミを入れると、かえって強い枝を出し、枝葉への養分が分散されてしまいます。

そこで、せん定の安定期(4月~10月)の中でも、樹勢に影響の少ない6月から7月、9月がせん定の適期となります。

特に安定期の初めに行えば、その後の生長曲線は緩いので、整った樹形を長い間保つことができるので、効果的です。

※ただし、これは花芽を気にする必要のない、樹形を楽しむ庭木に限ってのことです。


◆自然樹形を維持する庭木のせん定

自然樹形を楽しむ庭木は年に、1~2回のせん定で樹形を保てます。

毎年行う場合は、年に一度、最も生長した直後の6月から7月に行うだけでもいいでしょう。

夏にこまめに行う場合は、6月から7月に一度行いそして、第2生長後の9月にもう一度行うようにします。

◉仕立て物にする庭木のせん定

人工的に仕立てる物や刈り込み物は、6月から7月と9月の他に、お正月向けに秋から冬の手入れもすることになります。

秋から冬は、せん定を避けたい期間ですが、特に寒さに弱い樹木や、秋から冬の間に古葉を落とす性質のあるものは、要注意です。

仕立て物の樹木は、誤って強く刈り込むと、葉を全て落とすことにもなりかねません。

枝枯れを起こすことにもなるでしょう。

よって、秋から冬の手入れをする場合は、全て細心の注意が必要になります。

◉花を楽しむ花木の多くは、花後せん定が有効

花木は、花芽のできる時期によってせん定の適期を考えます。

〈当年生枝に開花する花木〉

春から伸びた枝(当年生枝)に花芽をつけ、その年の内に開花するもの。

これは、花芽をつける枝が伸びる直前の3月下旬から4月にせん定します。


〈前年生枝に開花する花木〉

春から伸びた枝にその年の内に花芽をつけ、花芽はつぼみのまま冬を越し、翌年に開花するもの。
(開花期からみて、前年にできた枝に開花)

これは開花直後にせん定(花後せん定)します。

開花後に翌年の花芽の準備が始まるので、花後以外の時期では、花芽を捨てることになるからです。

◉常緑樹の強いせん定は活動期直前の3月から4月

毎年の定期的なせん定で、一定の大きさを保つには正しいせん定の時期がありますが、放任したままで、育ち過ぎた庭木を小さくする場合は、花木、樹形を眺める樹木とも、4月上旬の活動期間前が適期になります。

この時期であれば、せん定後の生長力も強く、小さくて貧弱な姿になっても、早く回復することができるからです。

常に緑を楽しむためには、強せん定は避けたいものです。
それでも行う場合は、3月下旬から4月上旬を原則として行います。
    

◉まとめ

自然樹形を楽しむ樹木のせん定
6月下旬から7月と9月の安定期に行う。

人工樹形、刈り込み物に仕立てる樹木のせん定。
6月下旬から7月と9月、及び秋から冬(12月頃)に行う。

当年生枝に開花する花木のせん定。
3月下旬から4月上旬に行う。

前年生枝に開花する花木のせん定。
花の終わった直後(花後せん定)に行う。

常緑樹を強くせん定する場合
3月下旬から4月にかけての活動期直前にせん定。