緑のお医者の徒然植物記

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2021/05/24

バラ 「全般」No,475

 バラ バラ科   双子葉植物

バラには数多くの園芸品種があり、特に花の色や形は多種多様ですが、分類学上は全て同じ科、同じ属に含まれます。

植物の進化の過程で見るとバラ科は、最初に発芽する子葉が2枚の種子植物(双子葉植物)の中では、中間的な位置を占めます。

双子葉植物で最も原始的な科目はモクレン科で、最も進化した科目はキク科です。





バラ科の植物の特徴

バラ科の植物は、花弁と萼(がく)がそれぞれ5枚あり、雄しべは多数、雌しべは1本から多数あるものまであります。

これらの特徴は他の科でも見られますが、バラ科が他の科と大きく異なるのは、✣花床が肥大し筒状または盃状になり、その上部の縁に花弁と萼が同心円状に付着していることです。

この花床の肥大の仕方はバラ科の中でも植物の種類により異なります。

✣花床(かしょう)とは、花托(かたく)ともいい、花柄の末端にある花弁やがくなどの付着する部分のこと。




生育環境

日当たりがよく、風通しの良いところが適します。
日陰での栽培は難しい、西日の当たる場所もよくありません。

乾燥を嫌うので真夏と冬は株元をマルチングします。

どんな土壌でも育ちますが、土質には敏感です。

排水、保水ともよく腐植質に富んだ土で、やや粘土質の方が適します。


肥料(施肥)

バラの土と肥料は、かなり株の生育に微妙に現れてきますので、冬期の元肥をきちんと行う事が重要です。

元肥は長期間肥効が持続するよう、有機質肥料を主体にします。

冬の休眠期は有機質と合わせて、ある程度の深さに耕しながら施します。

夏は生長期ですので、根を傷めないように株周りにばら撒き、表土と軽くかき混ぜておきます。

バラは四季咲き性のものが多く、常に伸長する枝梢(ししょう)に花芽を作り、秋遅くまで花を咲かせます。

バラは他の花木より栄養を多く必要とします。
肥料は油かす、魚粉、家畜の糞尿などの有機質なものと、化学肥料や化成肥料などの無機質なものがあります。

肥料の3要素と呼ばれるチッ素、リン酸、カリはそれぞれ単独に働くのではなくバランスが大切です。

3要素の他にある程度の量を必要とする中要素と言うべきものに、カルシウムとマグネシウムがあり、不足しないように補給する必要があります。

カルシウムは細胞膜を作るのに関係しています。

また、生理作用を助け、物質代謝の結果、できる有機酸を中和します。

マグネシウムは葉緑素の生成に必要であり、リンの移動を助ける生理作用や脂肪の生成にも関係しています。

バラは一年に一回、冬の元肥を与える時に、苦土石灰を植えてある株の周り全面に撒いて、一緒に耕せば足りるでしょう。

その他にごく少量の植物の生長に不可欠な元素として硫黄(s)鉄(Fe)ホウ素(B)マンガン(Mn)モリブデン(Mo)などがあり、微量要素と言われています。

ただし、これらは有機物や特に有機質肥料、骨粉や油かすなどには十分含まれているので、有機質肥料を使う限り不足の心配はありません。


家庭の庭に植えているバラには、どれだけの肥料が必要かと言うデータは残念ながらありません。

肥料は少なければ生育が悪く、多過ぎれば生育に支障をきたします。

そのような与え方を続けていると、土に蓄積されて植物が育たなくなります。

バラの切り花栽培では、施肥量の研究があり、一株のバラが一年間に必要とするチッ素の量はおよそ30gで、チッ素、リン酸、カリの比率は1:3:1が望ましいとされています。

このデータが、庭植えのバラに当てはまると言う裏付けはありませんが、目安としては貴重な参考値です。

実際にこの量を与えて毎年満足な結果を得ているとの報告まあります。



施肥の目安として、1月から2月に完熟堆肥に鶏糞を混ぜ、少量の過燐酸石灰(100〜200g)と硫酸カリ(100〜200g)を加えて株周りに穴を掘って埋め込みます。


追肥は、5月と8月に鶏糞(200〜300g)に油かす(100〜200g)を混ぜ、少量の化成肥料を加えばら撒きし軽く土をかけます。

追肥ては、植物の生長に応じて与える肥料で、速攻性の化学肥料が主体となります。

与え方は株元にばら撒くか、水に薄めて液肥としたものを施します。

庭植えの場合、元肥をしっかり行っていれば追肥はそれ程重要ではないでしょう。

鉢植えの場合は鉢土に肥料を混ぜないので、生長が始まる3月から秋の開花前まで有機質主体の配合肥料を置き肥とし、化学肥料の液肥と並行して与えます。


せん定  5月花後、夏、秋の花後、12月から1月のせん定

花芽分化期4月上旬〜9月下旬頃
バラは萌芽力が強いので、せん定は楽に行なえます。

古い枝を積極的にせん定すると芽が多くつきます。

夏のせん定    (関東地方以西の場合)

主として四季咲き性が対象で8月から9月までに行います。

涼しい時期になって行くので遅れないように注意しましょう。

生育期なのであまり強く切れませんが、春のせん定と違って切る時期を変えることによって開花時期を調節できます。

秋のせん定と言われることもありますが、この時期はまだ残暑が厳しく、気温は真夏並みです。
秋の花のために行うせん定なので夏のせん定と呼ぶのが妥当でしょう。

冬と違って生育期なので葉が茂って骨格が見えにくいので、樹高を詰めることを先行します。

冬と同様、新しく発生したシュートと春に開花した枝幹ではやり方が異なります。




一季咲きのものは秋には花が咲かないので、細枝や枯れた幹を取り除き透かしてやりますが、冬に切ってしまう古い幹をこの時期にもとから取り除き、密度を避けてやれば病害虫の発生を軽減できます。

新しいシュート

シュート·ピンチとは、新しく伸びた枝(シュート)の先端につぼみが見えた頃、指で先端を摘み取ってシュートの生長を止めて充実を図ることです。

例外的につるバラでも、シュートが太くなり過ぎるのを防ぐために行うことがあります。

ピンチ処理をして枝分かれをさせたシュートでは、分かれた枝2本とも分かれた部分から葉を3〜4枚残したところで切ります。

ピンチをしなかったシュートはホウキ状に枝が出てしまっているので、下の枝を2本残し、杖の枝を切り取ります。

残した2本は同様に葉を3〜4本つけた長さで切ります。

春に開花した枝幹は2番花をつけた枝を3〜4枚の葉を残して切ります。


なお、この夏のせん定は日本特有の行いで、緯度が高く冷涼な気候の欧米では咲き柄摘みか軽い枝の整理にとどめているようです。


冬のせん定 12月から3月上旬     (関東地方以西の場合)

バラが活動を停止している休眠期なので一年に一回、強くせん定出来る時期です。

全てのタイプのバラについて密度、高さともバッサリと調整する。

時期の幅は広く、春の開花時期も変わりません。

バラの芽は2月中旬頃になると膨らんできますが、膨らんでこないと芽が見にくいので、2月下旬から3月上旬がせん定の適期です。

本質的には気温の低い休眠期に春の花ために行うものなので、冬のせん定と呼ぶのが妥当でしょう。


枝を切る位置は残す芽のすぐ上で切り(5〜10㍉)芽のない部分をなるべく短くします。

長いと見苦しいうえに先端から枯れ込んでくるからです。

太いシュートや幹も同様で、枝が出たところより上に不要な部分があったら、せん定の際に切りと取ります。

切り口は斜めに切るのではなく枝に対して直角になるように切るべです。

枯れた幹、弱った幹、古い幹を元から切り取ります。
残すべきシュートの数を制限します。

シュートの数が多過ぎると混み合うばかりで、しっかり花をつけることができなくなるので株の勢いや大きさに応じて、3〜4本、5〜6本を残すようにします。


その際には、元気のあるよい枝、若い枝を選んで残します。
尚、ミニチュアなどは多めに枝を残します。

更に昨年開花した幹で同じ場所から2本以上の枝が出ている場合は、枝の勢いや向きを考えて一本を残し、あとは切り取ります。

昨年新しいシュートが出なかった株はやむを得ないので古い幹を残しますが、古くなったものは数が減っても切ることになります。



つるバラの冬せん定、誘引

つるバラは原則的には今までの誘引をすべて取り外し、一からやり直します。

この作業をしないと頂芽優勢で上部だけが繁茂し、風で倒れやすくなるばかりか、新しいシュートが出にくくなります。

なお、バラの本にはつるバラはせん定、誘引は年末までに済ませる。

遅くなると幹が裂けやすく、膨らみかけた芽を欠きやすいと書いてあるものが多いが、避けやすいのはバラの品種の特徴であり、早めにやっても裂ける品種は裂ける傾向があります。

芽が欠けても替わりの芽が伸びてくるので、花数が特別減ることはありません。

遅くなっても3月上旬までに行えばよく、また一からやり直す事は必要です。

古い幹から(シュロ縄で結束)誘引していき、誘引する時には少なくとも45度以下に寝かせた角度でないと、頂芽優勢で先端の芽だけが伸長して花数がぐっと減ることになります。

幹の間隔は20cmはあけ、幹は誘引しながら先端を30cmほどカットします。

古い幹を利用するする時は開花枝を2〜3芽残して切り詰めます。

細枝を下部に配置すると開花時に、下から上まで花で覆うことができるでしょう。


一季咲きの品種は春まで花が咲かないので、新しいシュートが発生した数に応じて古い幹元から取り除いて、茂りすぎないようにすれば、病害虫の発生も軽減できることにもなるでしょう。


新しいシュートの生育具合を見ながら随時行いますが、新しいシュートは寝かせる側枝が多数発生し、また途中で折れないように随時長い支柱に数本ずつまとめて軽く結束します。


バラ特有の土壌と肥料について

田土の深土をベースに関東地方の場合は、これに山土か赤土を2割加え牛糞を多く鶏ふん、米ぬか、もみ殻くん炭、堆肥または腐葉土を交互に土に混ぜ、積み重ねて1年以上かけて作るバラ特有の土壌。

苗の植え付けの時に化成肥料を加えて使用するのが理想的で、鉢植えの場合にも利用できる。

植え付けの時期

11月から12月と2月から3月はじめまでで、寒い地方では春に行います。




バラの薬剤散布

治療と予防
バラは病害虫が多いので、定期的に薬剤を散布し予防します。

春から秋にかけては1ヶ月に1〜2回殺虫剤、殺菌剤を散布します。

✫殺虫剤=スミチオン、オルトラン水和剤など
✫殺菌剤=サプロール乳剤、ベンレート水和剤など

冬期の12月から2月頃に冬期使用限定の石灰硫黄合剤を月に2〜3回散布。

✿ポイント

定期的に薬剤を散布する事が必要であるので、薬剤散布の年間スケジュールを立てて計画的に防除!


✣病気
黒星病、うどん粉病にはサプロール乳剤の散布
この薬剤は葉やはなを汚さない。

✻灰色かび病
ツボミや花に発生
早めにベンレート1000倍液を月に2回程度散布。


害虫

✣バラクキバチ
5月から6月頃、成虫が新梢部に産卵するために傷をつける。

このため、新梢部は急に萎れやがて傷口の部分で折れてしまう。
被害を受けた部分は除去して処分する。

✫マメコガネ
バラの花はよく被害にあう。
見つけ次第捕殺、大量に発生した時はデナポン、ディプテレックスを散布。

✻チョウレンジ
ハチ類の幼虫
夏から秋にかけて多く発生する。
種類により発生回数が多少異なる。

✫対策
捕殺する。
アセフェート、マラソンや殺虫用のスプレーなど、なるべぬ早い時期に見つけて、駆除することが一番の予防。


✣ゴマダラカミキリムシ
捕殺する。
サッチューコートS(樹幹散布剤)などを塗布して防ぎます。

✫クロケシツブチョッキリ
発生時期は毎年同じ頃、4月から7月頃まで発生する。

新梢に傷をつけて産卵するために、新梢が萎れて数日後には褐色に変わり枯れる。

成虫を探して捕殺できるが素早く落下して逃げたりする。
発生が多い時には薬剤散布する。

被害が毎年出る時は予防殺虫剤を散布する。

スミチオン、ディプテレックス、オルトラン、他

バラの新規情報

室内にある鉢植えのバラに、根元から上向きに光を当てることで花が長持ちし、バラが美しく保てることが判明した。

下葉の葉は、上から照明を当てる時以上に活性化する事も分かった。

この事を利用して、鉢植えの花を照らし、リハビリ施設や病院などで人々の心を明るく、癒やすことが出来るのではないかと考えられます。



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◆根頭癌腫病についての記載はNo,524
「根頭癌腫病について」を参照









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