植物の生育に不可欠な元素
作物はその目的に応じて改良した植物であり、基本的には植物が生育するのに不可欠な元素を作物も必須要素とするが、作物の種類やその使用目的に応じてはこの他にも必要な養分がある。
高等植物の体内には60を超える元素が検出されている。
この元素のうち、すべての植物の生育に不可欠な元素は16種が挙げられる。
16種の不可欠な元素
比較的植物の要求量が多い元素
多量必須要素と呼ばれる9種
①炭素(C)②水素(H)③酸素(O)④チッ素(N)⑤リン(P)⑥カリウム(K)⑦カルシウム(Ca)⑧マグネシウム(Mg)⑨イオウ(S)
微量必須要素と呼ばれる7種
①鉄(Fe)②マンガン(Mn)③銅(Cu)④亜鉛(Zu)⑤ホウ素(B)⑥モリブデン(Mo)⑦塩素(Cl)
高等植物の必須要素のうち、炭素、水素、酸素は生体の有機骨格成分として重要である。
これらは通常、大気や土壌水から十分に供給される。
また、塩素は要求量が少なく風によって海水の飛沫として、あるいは雨として十分量が供給されるので、大陸内部の地域を除いては問題としない。
一般に施肥管理を必要とするのは炭素、水素、酸素、塩素を除く12の必須要素である。
なかでも作物の要求量が大きく、土壌中で不足しやすいチッ素、リン、カリウムを三大栄養素あるいは三要素と呼んでいる。
これらの必須要素以外にも水稲(すいとう)やサトウキビのケイ素(Si)✫テンサイのナトリウム(Na)などのように作物の生育の好影響を与えるものがあり、特殊成分あるいは有用元素と呼ばれている。
✫甜菜(てんさい)は北海道の特産でサトウキビと並んで、砂糖の原料になるヒユ科フダンソウ属2年生の植物で別名サトウダイコンとも言う。
根を搾ってその汁を煮詰めると砂糖がとれる。
また、植物の生育にとって必ず必要でないものでも、それを食べる家畜には不可欠である。
コバルト(Co)ナトリウム(Na)セレン(Se)などがあり、作物としてはそれらを利用する家畜や人間の栄養をも考えた、肥培管理が重要である。
作物が健全な生育をするには、少なくとも必須養分16種が十分供給される必要がある。
これらの養分の一つが不足すると、作物の生育、収穫量は不足した養分量によって規制される。
必須要素が欠乏すると、植物体は各要素に特徴的な白化や壊死、葉の形態異常などを引き起こす事が知られています。
また、その欠乏症状の現れ方には大まかな規則性があり、体内を再移動しにくいカルシウム、ホウ素、鉄などはその時に盛んに生長している部位に欠乏症が現れ、作物の生育に致命的な障害を与えます。
これらの要素は作物の生育期間中に、必要量を絶えず供給する必要があります。
これに対し、体内での移動性が大きいチッ素、リン、カリウム、マグネシウムなどは不足すると古い葉から新しい葉に✫転流されるため、欠乏症状は下位葉から発生する場合が多い。
✫転流とは、植物の葉に形成される養分や根、地下茎などにある養分、あるいは発芽に際して貯蔵した養分が適当に変質、移動して他の部位に送られることを言う。
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