緑のお医者の徒然植物記

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2021/05/22

スギ花粉症対策による無花粉スギについて No,473

 花粉の出ない無花粉スギ

スギ花粉症は昭和38年(1963年)日光市で初めて報告され、全国的に増加しました。

平成25年には国民の4分の1は花粉症といわれ
ました。

花粉症の増加の原因は、食生活の欧米化や抗菌ブームで日本人の身体の免疫力や抵抗力が弱まっているからという説もありますが、自然環境の変化も大きな要因のようである。


どこから飛んでくるスギ花粉

スギは風媒花(ふうばいか)といって、花粉を風で飛ばして受粉するので、スギなどがほとんどない市街地でも花粉が飛んでいきます。

スギ花粉は非常に小さくてとても軽く、200km以上飛んでいくこともあります。


つまり、スギ林の花粉が遠く離れた市街地まで信じられない距離を飛んできているのです。


スギは木材としても優れ、生長も速いことから戦後の昭和20〜40年代に建築木材資源確保のため、全国各地に植樹されました。

その結果、国の総森林面積の18%以上を占めるようになりました。

その面積の分だけ、これまで自生していた自然樹林を伐採した事でもある。

人間の為だけに自然を壊したという事に尽きると思う。

その中で、安価な外国産木材が輸入され、国産木材の利用が激減し、伐採して活用されることも植栽地が手入れされることもなく、どんどん生長したスギは花粉をつけるまで大きく育って行った事で、スギの花粉が大量に風に乗って市街地に運ばれその結果、花粉症になる人が増える事に繋がったのです。


その後、花粉症は大きな社会問題になりました。

東京都では対策本部を設置し、花粉の少ない森づくりを推進していますが、一度に伐採してしまうには人材や資金が不足している事や、土壌を保持していたスギの根が無くなることで、土砂崩れが起こる危険度が増す可能性があり、簡単に解決できる問題ではありません。


花粉の出ないスギを作る研究開発

1992年に富山県農林水産総合技術センター森林研究所で、✣雄性不稔の無花粉スギが見つかりました。

✣雄性不稔(ゆうせいふねん)とは、雄性器官に異常があり、正常に花粉形成ができない性質の植物のこと。

この無花粉スギを見つけられる確率は5千本に一本と言われています。

見つかったスギをもとに無花粉スギの品種開発が進んでいきます。

2004年には、神奈川県自然環境保全センターでも無花粉スギが見つかり、苗生生産を進めて2008年から出荷を開始し、年間千本ほど生産して各地へ供給し、2019年には約1212万本に増加させており、全スギ苗木生産量に占める割合は約5割となっている。

2032年までに全スギ苗木生産量に占める割合を約7割とする事を目指しています。

福井県総合グリーンセンターの林業試験部でも、無花粉スギの開発が発表され、2023年には千本程の苗木を生産できる見込みであるとしている。

また、2029年度までに2万5千本分の苗が生産できるよう、種子を供給する計画である。

無花粉スギは福井県を含め計11県で開発され、この内3県で苗木を出荷している。



「花粉が少ないスギ苗木の生産量等の推移」


各地で少花粉、無花粉のスギ品種開発が進み、今までの花粉が出るスギを伐採して代わりに少花粉、無花粉のスギを植樹して少しずつ置き換えている。

伐採されたこれまでの花粉スギは木材として活用されている。

土砂崩れの危険がある為、一度に切って植え直すことができないので置き換えは少しずつ行うことしかできない。

根を張るまでに土砂崩れが起きることもありうる。

大都市周辺のスギ林の全てが少花粉、無花粉品種に置き換わるにはまだまだ先の事だろう。

林業の人手不足も深刻な状況である。

林業従事者の減少、高齢化などにより手入れが十分に行われていないスギ林も多くある。


公益社団法人、国土緑化推進機構では「緑の募金」を募っています。


「緑の募金」とは、身近な地域や国内外の森づくりなど、様々な「森づくり、人づくり」活動の活性化に活かされます。


✣寄付先=公益社団法人国土緑化推進機構

寄付の方法=街頭、コンビニエンスストアなどの募金箱、振込用紙、インターネット、直接持参、協賛商品の購入

〒102-0093
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http://www.green.or.jp/bokin/


✻後書き
現在進行系で進められているスギ花粉飛散での、無花粉スギの開発であるが、全国各地のスギ林の置き換えが全く問題がないと言う事にはなりません。

土砂崩れ、山崩れなどの問題がないような平野部での無花粉スギへの変更はよいとしても、山間地での置き換えは問題があると思います。

この問題に反対をしている人々も多いのではないだろうか!

単に、木材資源の確保のためや花粉症対策と言う問題の上では置き換えする事が良いとなるでしょう。

しかし、生きているのは人間だけではありません。
自然界に生きる動物たちや野生植物は無視されたと思います。

人里に熊などが出没するようになったのは、そもそも人間が動物たちの生活環境を壊した事が原因であるのだと思います。

もともと自生していた自然樹林を伐採し、動物たちの食生活を壊し、奪ってしまったのは紛れもない、人間ではないだろうか!

スギを植樹し自然を壊したのは人間、それが事実ではないだろうか!

本来ならもとの自然に戻して行くことが、一番のはずでなければならないのです。

この問題はとても重要で深く考える必要があります。

その中で、自然を守る運動、活動など重要である事は云うまでもありません。