緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2022/10/05

パパイヤ(ア) No,621

パパイヤ(ア) 常緑果樹

原産地=熱帯アメリカ

パパイヤの歴史は2億年前に始まり、約1億4千年前まで続いた「ジュラ紀」にまで遡り確認できる。

巨大恐竜もパパイヤを食べていたのかも知れませんね。

パパイヤの名前の由来は、ジャマイカの先住民族であるアラワイインディアンの言葉が由来であるとされていますが、諸説あるようです。

果実から乳汁が出ることから、和名では乳瓜(チチウリ)や木瓜(モッカ)などとも呼ばれている。

日本には明治時代になってから、「蕃瓜」「万寿果」という名前で伝えられたとされ、沖縄ではパパイヤの事を「命(ぬち)ぐすり」と言ってとても重宝しています。





果実は球形、長円形、楕円形のものなどがありますが、長円形や楕円形のものは甘みが強く果汁も多いので生食に適している。

球形のものは砂糖漬けなどの加工用に適しています。


実の形によってワシントン、セイロン、ライチ、ハネデュー、ボーバルなどに分かれます。

よく熟した実は独特の匂いが薄れ、カキに似た味が美味です。

樹高は7〜8㍍になり、幹は直立性で葉は大きくヤツデ状に広がり、先端部分に群生しています。

花は葉柄の基部につき、多くは雌雄異株ですが、同株異花や両性花をつけるものもあります。


輸入が許可された1968年以降に市場に多く出回るようになり、小笠原や鹿児島などでも栽培が始まりました。


栽培場所

生育適温は25〜30℃で、越冬も15℃以上必要であるため、庭植えは沖縄県辺り以外では育つことができません。

鉢植えで育てますが、赤玉土5、川砂3、腐葉土2の混合土に植え、春から秋は戸外で直射日光に当てて育てます。

冬は日当たりの良い場所へ置いて管理します。

日光と高温を好み、強い日光に長く当てるほど品質や収穫がよくなります。


肥料

生育期は2ヶ月に一回、5月、7月、9月に玉肥を2個から3個ずつ置き肥します。


せん定
主枝一本の主幹形にするか主枝二本の双幹形に仕立てます。

葉は頂部にしかつかないので、特別なせん定は必要ありません。


果実

果実は頂部の葉腋から重なり合うように多数結実しますが、幼果のうちにかなり生理落果します。


種子まき

①果実から種子を取り出したらよく水洗いしてすぐに播きます。

赤玉土小粒6、川砂2、ピートモス2の用土
5〜6号鉢の鉢底にゴロ土を入れ、8〜10粒をまき1cmほど覆土し水を与え、25℃で管理する。

②鉢上げ(3号鉢に)
本葉3〜4枚で同じ混合用土に根をよく広げて移植します。
その際、根に触れないように化成肥料を2〜3g入れます。








2022/10/03

グァバ No,620

 グァバ フトモモ科

原産地=熱帯中央アジア、ブラジル

グァバの起源は紀元前800年のインカにまで遡るとされます。

ハワイにはモントゴメリーにより、1851年にオーストラリアから導入されたとされるが、それ以前の1830年代にはすでに記載されている。

ただし、1851年までは野生種はなかったとされています。

一般にグァバという名で呼ばれている果樹には、熱帯中央アジア原産の「バンジロウ」とブラジル原産の「テリハバンジロウ」の、二種類がある。

普通、グァバと呼ばれる種類の他に、ブラジルグァバ、コスタリカグァバ、ストロベリーグァバがあります。

ストロベリーグァバは、グァバの中では耐寒性があり、東京以西の暖地なら庭植えも可能です。

同じ種類に、淡黄色の実をつけるイエロー·ストロベリーグァバがある。


沖縄や鹿児島南部以外では栽培できないので鉢植えにします。


果実は甘く、酸味を含み、ビタミン類が豊富で麝香(じゃこう)に似た芳香があるとされる。

葉にタンニンを含むので、お茶の代用としても利用されます。

白い花や葉も美しく、切り花や観葉鉢物としても楽しめます。





栽培場所

生育適温は20〜25℃で、6℃以下になると生育が止まります。

赤玉土小粒6、腐葉土2、川砂2の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置き、冬は室内に入れ10℃以上で越冬させます。


肥料

毎年3月、玉肥を4個から5個を根回りに置き肥します。

せん定

対生して枝が発生する習性があるので、一方を間引きせん定し、交互に枝が出るようにして樹形をつくります。

毎年伸びる主枝は先端部を半分ぐらい切り戻して、節間のつまった丈夫な株に仕立てます。


果実管理

果実が大きいので摘果が必要です。

一本の結果枝に1〜2個の果実を残して他は摘果し、ひと鉢全体で8〜10果ぐらい収穫できるようにします。


実生(7月〜8月)

①種子をよく洗い1日〜2日、日陰に干します。

②4〜5鉢に10から15粒をまき、1cmぐらい覆土します。

赤玉土小粒6、腐葉土2、パーライト2の混合土で、鉢底にはゴロ土を入れます。

③本葉3〜4枚で鉢上げし、2.5〜3号鉢に植えます。

その際には根に触れないようにして化成肥料を入れます。

✿関連ブログ記事
バンジロウ(グァバ)No,486








2022/10/01

スダチ、カボス No,619

 スダチ、カボス ミカン科

酢橘 東洋のレモンとも呼ばれる。

スダチの歴史は古く、万葉の昔から徳島の地に自生していたとの説もある。


          「スダチ」


スダチは「ユズ」の偶発実生と言われていて、今から300年ほど前の書物(大和本草1706年)には「リマン」という名前でスダチの記録が残されているようです。

本格的に栽培されるようになったのは昭和30年以降とされる。

スダチは徳島県原産の果物で、カボスやユコウと同じ香酸柑橘類

名前の由来は食酢として使っていたことにちなんで「酢の橘」から酢橘と名付けていたが、現代の一般的な呼称はスダチである。

近縁果に「ユコウ」「ユズ」があります。

1974年(昭和49年)にはスダチの花が徳島県の県花に指定されました。


スダチの露地ものは8月下旬から10月頃が収穫時期で、貯蔵されたものが3月頃まで出回ります。

ハウスものは3月中旬から8月中旬頃に収穫されます。


カボスは大分県の特産品として有名です。

江戸時代に臼杵市で栽培が開始したのが最初とされ、臼杵、竹田、豊後大野市などが主な産地です。

カボスは全生産量の95%以上が大分県産です。


          「カボス」


スダチは2年目、カボスは3年目から開花結実しますが、3年目までのものは摘果してしまい、4年から5年目の果実から収穫します。

栽培地

耐寒性があり、マイナス5℃以下にならない場所では庭植えできません。

水持ちの良い土層の深い場所が敵地で、やや日当たりの少ない方が芳香の良い果実が得られます。

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、西日の当たらない場所へ置きます。

寒風に弱いので冬は室内に入れて管理します。


肥料

3月に300gぐらいの配合肥料を根回りに溝を掘って埋め込みます。

鉢植えは、毎年4月に玉肥を3〜4個置き肥します。

収穫するようになったらいずれも9月に同量ぐらい追肥します。


せん定

発芽前の3月上旬に行います。

内部によく日が当たるように間引きせん定し、側枝は長くなったら更新し、若枝を保つようにします。


果実管理

7月上旬に目標数を残し、不良果実や小果実を摘果します。

スダチの効能

スダチはビタミンC、リモネン、クエン酸、食物繊維、果糖などが多く含まれており、ビタミンCは免疫力強化や風邪予防、美肌などの効果があります。


また、クエン酸には体内の疲労物質の除去や浄血作用などを行い、体の疲労感を取り除く効果があるとされています。


芳香成分のリモネンには精神を安定されたり、食欲を増進させたりする効果があるとされる。









2022/09/28

肥料成分の配合と性質 No,618

 肥料の三大要素

要素の種類によって植物に及ぼす効果は異なり、肥料の性質は三大要素のチッ素、リン酸、カリの配合比と量で決まります。


葉茎の育ちを良くしたい場合は、チッ素成分の多い肥料を与え、花をたくさん咲かせ実のなりを良くしたいのであれば、リン酸成分の多い肥料を与えます。


肥料の性質を知って、目的に応じて使い分けることが大切です。

化成肥料には「8-8-8」や「5-8-4」などの数字が記載されていますが、これはそれぞれの肥料に含まれる「チッ素、リン酸、カリ」の順番で表記しているもので「8-8-8」の場合は、肥料全体を100gとした時に、チッ素8g、リン酸8g、カリ8gが含まれることを表しています。

また、数字が大きければ、同じ重さの肥料を与えても施用量は異なります。

必要以上に肥料を与えると植物が軟弱に育ち、病害虫が発生して枯れたり、肥料やけを起こし、成長が悪くなることもあります。


しかし、養分が不足した場合、生育は衰えますが急に枯れることはありません。

施肥する時は、肥料の表記をよく確認して与え過ぎない事が大切です。



①マグネシウムはリン酸の吸収や光合成を助ける。

②カルシウムは植物の組織を作る。
不足すると新芽が枯れて成長が遅れる。

③チッ素は葉肥(はごえ)とも呼ばれ、植物の体、特に葉や枝を大きく成長させる要素で、足りなくなると葉が黄色っぽくなる。


④リン酸は、花肥](はなごえ)実肥(みごえ)とも呼ばれ、開花や結実、根の成長を促します。

不足すると花つきが悪くなったり、開花や結実が遅れたりする。

⑤カリは根肥(ねごえ)とも呼ばれ、根や茎を強くし、各部の成長を良好にする。

足りなくなると葉の中心は暗緑色、先端や縁は黄色っぽくなるなど、病気にもなりやすく成長が遅れます。


化学肥料

チッ素肥料(N)


✪硫酸アンモニア(速効性)
アルカリ性の肥料、石灰、草木灰などと混ぜて使用しない。
日数をおく。

✪硝酸アンモニア(速効性)
他の肥料と混用しない。
貯蔵中は火気に注意する。

✪尿素(ウレア、やや速攻)
大豆かすと混用しない。

✪石灰窒素(速効性)
カルシウムを含む
アンモニア系の肥料と混用しない。

✪IBチッ素(暖効性)
化学的に暖効性を持たせた肥料

✪大豆かす(有機質肥料、暖効性)
N:P:K=6:1:1程度
チッ素肥料として使用


リン酸肥料(P)

✫過リン酸石灰(速効性)
腐葉土や堆肥と混ぜて使用すると良い
石灰を含む肥料とは混用しない

✫骨粉(有機質肥料、緩効性)
リン酸肥料として利用
肉が混ざったものはチッ素含む


カリ肥料(K)

❉塩化カリウム(速効性)
吸湿性が強いので密封保存する

❉硫酸カリウム
肥効が長持ちする
ただし、施肥量の多い場合は一度に与えず分肥する

❉有機質肥料
魚かす(速効性)
魚肉にチッ素を含み骨にリン酸を含む
草木灰を混ぜると良い

❉乾燥牛糞(緩効性)
チッ素は鶏ふんの三分の一程度


石灰肥料

消石灰(水酸化カルシウム)
生石灰(酸化カルシウム)
炭酸石灰(炭酸カルシウム)

石灰肥料は、カルシウムの補給よりも土壌の中和を目的として使用される。

チッ素肥料などの肥効を減少させることがあるので、肥用には注意が必要となる。

炭酸苦土石灰(炭酸マグネシウム)

苦土石灰は土をアルカリ性に傾ける効果があるので、苦土石灰をうまく使えば植物はとても育ちやすくなります。

苦土=マグネシウム、石灰=カルシウム、「ドロマイト」と呼ばれる岩石を使いやすいように、粉状、粒状にした肥料で、炭酸カルシウムと酸化マグネシウムが主成分








2022/09/27

植物に必須な元素 No,617

 植物に必要な中量要素

チッ素、リン、カリウムの三大要素に次いで、重要な成分であるカルシウム(Ca)マグネシウム(Mg)イオウ(S)に「中量要素」と呼びます。

カルシウムは、植物の細胞分裂や組織形成に関わる成分で、不足すると新芽の先や葉の先端の色が白っぽくなり、枯れてきます。


カルシウムは細胞壁成分の1つであるペクチン酸のカルボキシル基と、架橋を作ることによって細胞壁の構造の維持に関わっている。

大半は細胞壁や細胞膜などの部分(アポプラスト)に存在し、細胞質内の濃度はごくわずかで、ショウ酸と不溶性の塩を作って液胞中に存在する。


細胞質内ではタンパク質(カルモジュリン)と結合し、セカンドメッセンジャーとして機能している。

その他、ATPase、ホスホリパーゼなど膜結合性酵素を賦活化する。

❉賦活化(ふかつか)
活力を与えること、活性化


❉ホスホリパーゼは、リン脂質を脂肪酸とその他の親油性物質に加水分解する酵素である。

触媒する反応の種類により、A.B.C.D.の4種に大きく分類される。

❉触媒(しょくばい)とは、一般に、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものを言う。

化学的には触媒は、化学反応を促進させるような物質のことである。


マグネシウムは、葉緑素を構成する元素で、すべての植物にとって重要な成分です。


不足すると、古い葉から順に葉脈と葉脈の間が黄色くなってきます。

マグネシウムは、葉に含まれる約10%はクロロフィルの構成成分となっているが、70%は水溶性で多くの酵素の活性化や、細胞pH調節アニオン(陰イオン)のバランス維持に重要な役割を果たしている。


酵素タンパクと「ATP」との間に、架橋を作りリン酸化反応を助ける。

また、「グルタミン合成酵素」の活性化やタンパク質合成系に関与する。


ATP(アデノシン三リン酸)とは、すべての植物、動物及び微生物の細胞内に存在するエネルギ分子です。

細胞の増殖、筋肉の収縮、植物の光合成、菌類の呼吸及び酵母菌の発酵などの代謝過程にエネルギーを供給するために、すべての生物が利用する化合物である。

グルタミン合成酵素は、細胞内の窒素利用を制御する上で中心となる酵素である。

グルタミンはタンパク質を作るだけではなく、DNA塩基やアミノ酸のように窒素が多く含む分子を作る酵素に、窒素原子を渡すのにも使われる。

そのため、グルタミンを作るグルタミン合成酵素は、慎重に制御されなければならない。


イオウ(硫黄)は、タンパク質、アミノ酸、ビタミンなどを構成する元素なので、全く無いと植物は生育できません。

火山の多い日本では、天然の土壌中に含まれているので不足することは殆どありません。


鉄、マンガン、ホウ素などの量としてはごく微量でも、植物の生育に欠かせない元素を「微量要素」と呼びます。

天然の供給、又は培養土や堆肥などの資材に十分に含まれているので、不足することはほとんどありません。

植物は根から硫酸イオンの形で吸収する。

葉からも少しではあるが空気中の二酸化硫黄(無機化合物)ガスを吸収する。

硫酸イオンは還元されて、含硫アミノ酸などの有機化合物に変化し、一部はそのまま膜の糖脂質(スルホリピド)に組み込まれる。









2022/09/24

三大芳香花 No,616

 どれだけ香るというの?

かつてキンモクセイは、トイレの消臭剤としてその香りがよく使われていました。

「九里香=きゅうりこう」の別名を持つことからも分かるように、強い芳香があります。

九里は日本の1里で約4kmですから36kmにもなります。

キンモクセイの原産地である中国の1里は400〜500㍍ですので、10分の1程に短縮されます。

それでも相当な距離になります。

強い香りでトイレの臭いを消すためと言われていますが、実際には無理があります。

「秋の香り」とも言われるキンモクセイの香りは、10月の上旬に10日間ほど香るだけです。

なので、トイレの横に植えたとしても消臭作用は、ごく短期間しか発揮することはできません。

長らくトイレの消臭剤として使われてきたキンモクセイも、現在ではほとんど使われなくなりました。

一方、この九里香に対して「七里香」の名を持つ植物が「ジンチョウゲ」です。


早春に「ダフネチン」という香り成分を持つ花が咲いて、甘い芳香を漂わせます。

また、歌謡曲に「旅路の果てまでついてくる」と歌われる「クチナシ」の花もすごい香りですが、旅路の果てまでが一体何kmなのか?と疑問ですが、どれだけ臭うのかと言う話です。

様々に例えられた3種のキンモクセイ、ジンチョウゲ、クチナシは『三大芳香花』とされています。


✿関連ブログ記事
キンモクセイNo,290
ジンチョウゲNo,7.No,134
クチナシ(アカネ科)No,6








2022/09/23

虫を惑わす植物の香り No,615

 虫を惑わす色香

数ある花の中には強すぎて嫌われる香りがあります。

ユリの女王と呼ばれる「カサブランカ」

「カサ」が家、「ブランカ」が白色、スペイン語で「白い家」を意味しますが、レストランなどの料理店では、料理の香りがこの花の強い香りに負けてしまう事から、敬遠されています。


        「カサブランカ」


そのため、香りを抑えた品種が作られていますが、そこまでしても『飾りたい』と思われるのもこの花の美しさからでしょう。


一方、「官能を刺激する香り」と言われるのは「イランイラン」という花の香りです。

この花の名前はタガログ語で「花の中の花」を意味し、香りはとても官能(特に性的感覚)的で東南アジア(フィリピン、インドネシア)では、新婚カップルが夜を過ごす部屋に巻き散らかす花として知られています。


        「イランイラン」


イランイランノキはバンレイ科の東南アジア原産であるが、世界中の熱帯地域で栽培され、香料や材、観賞用に利用されている。

特に花から抽出される精油は、様々な香水に利用され、アロマテラピーにも用いられています。


『芳香が百里漂う香り』と言われる滋賀県伊吹山に自生する「イブキジャコウソウ」別名を「百里香=ひゃくりこう」といい、全体に麝香(じゃこう)のような香りがする。



❉イブキジャコウソウ シソ科
別名=イワジャコウ、ナンマンジャコウソウ

基本は高山植物

人間の場合、「色香で惑わす」と言うような言葉はあまり良いとされる表現ではありませんが、植物は確実に色香で虫を惑わし、誘い込むという生き方をしています。


そのために花には色々な香りがあり、香りは虫を誘う役割をしているのです。


❉麝香(じゃこう)とは雄のジャコウジカの腹部にある麝香腺(香りを入れる袋)から、(雄1頭から約50g)得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種でムクスとも呼ばれる。


麝香は甘く粉っぽい香りを持ち、香水の香りを長く持続させる効果があることから、香水の素材として古くから重要されてきた。








2022/09/22

グレープフルーツ No,614

 グレープフルーツ ミカン科

原産地=西インド諸島のバルバドス島

別名=ポメロ、トローニャ、パンプルムース

黄色い実がブドウの房のように鈴なりにつくのでこの名がある。

果肉は白色、薄い紅色、赤色、レモンイエローなど


       「グレープフルーツ」


グレープフルーツはマレー原産のザボンもしくはブンタンが中国を経て、西インド諸島に渡り、1750年代に西インド諸島のカリブ海のバルバドスで発見されたものが最初とされ、自然に交配した変種と言われています。


         「ブンタン」



ザボンとオレンジの雑種とする説もある。


          「ザボン」


グレープフルーツの名が初めて用いられたのは1814年のジャマイカとされ、その後、1830年頃にアメリカのフロリダに伝わり、テキサス、カルフォルニア等に伝わって大規模な生産が始まったとされている。

グレープフルーツの起源には、はっきりしない部分があると思います。


          「オレンジ」

栽培地

日当たりや水はけのよい深い土層が敵地ですが、ミカン類の中では寒さに弱い種類であるため、日本国内で庭植えできる地方は限られることになります。


九州、四国などの温かい地方で、冬に風の当たらない陽だまりになるような場所であれば、育てることも可能でしょう。



鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、
日当たりの良い場所に置き管理します。

冬の温度管理が大切なので、暖かい室内で保温し、夜間でも5℃以下にならないように注意します。

暖房設備のある家庭でも夜間は暖房を停止する事が多いので、必要とする温度を保てず失敗することがあります。


場所によっては簡単な温室が必要になります。

11月から3月末まで暖かい部屋に取り込んで冬越しさせます。


肥料

庭植えは2月に根周りに溝を掘って、配合肥料を200〜300g程度埋め込みます。

鉢植えは毎年4月に玉肥を3〜4個根周りに置き肥します。

鉢植えは水やりも大切ですので、表面が乾いたらたっぷりと与えます。

せん定

庭植えは主幹形仕立てにします。

花芽は枝先につくので基本樹形ができたら間引きせん定を主に行います。


混み合った枝を根元から切除して内部まで日当たりをよくしてやり、主枝は定期的に更新して新しい結果枝を発生させます。


鉢植えは模様木したてにして、鉢の高さの2.5〜3倍の樹形にします。

年数が経つうちに根が肥大して根詰まりしてくるので、5年目には植え替えが必要です。

5年後は1年おきに植え替えを行い、根の状態を良好に保ちます。

また、2年目の6月には、主幹と主枝に針金をかけて樹形を整えます。


果実の管理

人工受粉を行う必要があります。

多くの花が開花しますが、自然落花も多く、鉢植えで結実するのは一株で3〜4果です。

この中で形がよく大きいものを1〜2果選んで残し、他は摘果して養分を残した果実に集中させ、肥大させるようにします。


嗅ぐだけで痩せる香り

アメリカの医学博士アランハーシュが、様々な年齢の人の体にいろいろな香りを振りかけて、何歳に見えるのかを答えてもらう実験をしました。

すると、ほとんどの香りは振りかけても年齢相応に見えた中で、「グレープフルーツ」の香りをかけた中年女性は6歳若く見えるという結果が出たと言う。


グレープフルーツの香りについては、2005年に大阪大学の研究グループが「嗅ぐだけでダイエット効果がある」と発表しています。

しかし、実際にその効果がどれくらい大きいかは不明ですが、香りの成分から一応理論的に裏付けをすることはできます。


グレープフルーツの香りの1つは「ムートカン」という成分で、これは交感神経を刺激します。

刺激された交感神経は、興奮と緊張状態をもたらすので、エネルギー消費され、それを補うために脂肪が燃焼します。

グレープフルーツの香りを嗅ぐと痩せると言われるのはそのためです。








2022/09/20

日本の胡椒(こしょう) No,613

 山椒(さんしょう)

山椒は日本原産、ミカン科の植物と言われ、縄文時代の遺跡の中から山椒の入った土器が出土したことから、古くより利用されていと考えられ、そのため日本最古のスパイスとも呼ばれています。


しかし、現在のように香辛料として使われていたかは定かではないとされている。

山椒の原産地は2説あるとされ、中国でトウザンショウの果実を花椒と称し、香辛料として使われているのでそこから来たものであるとする説と、中国の花椒は山椒と別種であり日本が原産であるとする説がある。



     「サンショウの若葉」



若芽や葉、花や実なども香辛料として使われ、捨てるところがない。

太平洋戦争後に、香辛料や薬品原料として山椒の需要が急増したことで、畑での本格的な栽培が始まり、栽培面積も広がっていった。

サンショウはコショウと同じように香辛料として使われ、実は小粒でピリリと辛い。

また、実が弾けることから「はじける実」「はじけた実」という意味で、古くは「はじかみ」と呼んでいた。


    「山椒の実、4月18日」


葉っぱは強い香りがありますが、この香りは病原菌に感染しないためであり、また、虫や動物にかじられないためにも役立っています。

香りの成分はリモネン、ゲランオール、シトロネラールなどで、葉っぱは日本料理の食材にも使用されます。


「木の芽」とは山椒の若い葉を指し、木の芽和えとしても食される。

また、木材はすりこぎ棒に使われます。

食べすぎると腹痛や下痢などを引き起こすことがあるので注意が必要です。

山椒の適正な摂取量は定められていませんが、一回分の適量として、0.2〜0.3g程度が目安とされている。


❉関連ブログ記事
サンショウ(山椒) No,201








2022/09/18

根の光屈性と重力屈性 No,612

 光と反対方向に伸びる

植物の根は地中に向かって、茎は空に向かって成長します。

これは植物が重力の方向を感じとって行う「動力屈性」と呼ばれる反応です。


重力屈性は1985年頃までは「屈地性」と呼ばれていました。

動力屈性には、オーキシンという植物ホルモンが関与しています。

❉オーキシンはほとんど茎に対して根の方向にしか移動しない。

天然オーキシンと合成オーキシンに分類される。


種子が初芽すると根は必ず下に向かって伸びます。

芽の代わりに地上に根が出てくることはありません。

「なぜ根は下に向かって伸びるのか」というその理由の1つは、根には光と反対方向に伸びる性質があるからです。

芽が光に向かって伸びる「光屈性」に対して、これを「負の光屈性」と言います。

しかし、真っ暗な地中でも根は下へ伸びて行きます。

なので、根が下に伸びるのは「負の光屈性」という性質だけによるものではありません。

根には重力を感じ、その方向に伸びるという性質があります。

光のない真っ暗な中で発芽したものを、土中から抜き取って水平に置いておくと、根の先端はやがて下向きに曲がり、下に向かって伸び出します。

これは根の重力に対する反応であり「重力屈性」と呼ばれる性質によるものです。


根が下に向かって伸びる現象は、負の光屈性と重力屈性が支配さているということになります。

植物が、刺激の方向に支配されて運動する性質がある「屈性」には色々ありますが、実際、根が下に向かって伸びることに関しては、負の光屈性と重力屈性であるとされてきました。


しかし、それだけではないことが分かってきました。

そこで考えられるのが「根は水分を求めて伸びるのではないか」という可能性とする、水分が刺激となる「水分屈性」である。

根は水分を求めて伸びる性質がある


土の表面近くが乾いていても、地中深くには水分が存在し、その水分を求めて根は下に向かって伸びて行くのではないかと考えられます。

しかし、地球上には重力があるので、根が水分屈性で下に伸びていることを、重力屈性と切り離して証明する事は難しい。


そのため、水分屈性の関与についてはこれまで言及されてきませんでした。

しかし、近年、主に3つの事実を根拠として、水分屈性の関与がはっきりと認められています。

1つ目は、根が水を求めて伸びる現象で、例えば土の中の排水管などの割れ目から水が漏れていると、根が割れ目に向かって伸びる現象が観察されています。


2つ目は、重力を感じることがない突然変異体が「シロイヌナズナ」という植物で作られたことです。

❉シロイヌナズナとは、アブラナ科の植物で、遺伝子数が少なく、植物として初めてゲノム(遺伝子と染色体)情報が明らかにされているため、現在ではモデル植物(研究用植物)として様々な研究に利用されている。


       「シロイヌナズナ」


この突然変異体の根は、重力を感じることはないが、土の中深くに多くの水を求めて、下に伸びて行くということです。


3つ目は、宇宙ステーションでの実験です。

重力のない宇宙ステーションの中でも、シロイヌナズナの種子は発芽し、根が下に伸びたということです。

この時、発芽した芽生えの下には、岩石を加工して水を含むようにしたロックウール(保温材等として使用される)という物が置かれていましたが、無重力にも関わらず、根はロックウールに含まれた水を求めて伸びたのです。

地球上では重力があるため、水分屈性という性質が見えにくいが、無重力の宇宙でははっきりと水分屈性が示されたということです。







2022/09/17

槿花一朝の栄と言われる花 No,611

 ムクゲ アオイ科 木槿

別名=ハチス

原産地=インドや中国

花は同じアオイ科のフヨウ、ハイビスカス、オクラ、タチアオイの花によく似ています。

サルスベリ、キョウチクトウとともに「夏の三大花」
と言われるほど美しい花で、朝には大きく花を開くが夕方には萎れてしまう「一日花」である。


          「ムクゲ」

そのためムクゲの花は「槿花=きんか」と書かれ「この世の栄華のはかなさ」に例えられ、「槿花一朝の栄」「槿花一朝の夢」「槿花一日の夢」などとつかわれます。


一つひとつの花の寿命は短いが、次々と咲き花が咲く期間はかなり長く、夏の初めから秋まで咲き続ける。

一本の木で一日に50個の花を咲かせることは珍しいことではない。

1シーズンに千個以上の花が咲くこともある。


そのため韓国では「窮することがない花」という字を当てて、無窮花(ムグンファまたはムキュウゲ)と呼ばれ、国花となっている。


✪窮(きゅう)するとは、行き詰まる、困るの意味


      「アオイ科タチアオイ」


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2022/09/16

森のバターと言われる果物(アボカド) No,610

 アボカド クスノキ科ワニナシ属

原産地は熱帯アメリカで英語名の別名は「アリゲータ·ペア」果皮が動物のワニの肌に似ていることから「ワニのようなナシ」と名付けられました。



        「アボカドの花」


アボカドは熱帯コロンビア、エクアドル、メキシコ南部に野生していたもので、メキシコでは13〜14世紀にアステカ族(ネイティブアメリカン)によって栽培されていたとされています。

1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見した際には、既にアメリカ一帯で栽培されていたとされ、新大陸発見後、西インド諸島へ伝わって、その後、熱帯亜熱帯地域の各国に伝わったと言われています。


13世紀末のインカ王の墓から多くの歴史的発見物とともに、アボカドの種も発見されました。

アステカ文明は、1428年頃から1521年までの約95年間メキシコ中部で栄えた。

メソアメリカ文明の最後に現れた文明国家で、メシカ、アコルワ、テパネカの3集団の同盟によって支配され、時とともにメシカがその中心となった。

アステカ人はメシカ人とも言い、メキシコという国名は、アステカの言語であるナワトル語でメシトリの地を意味するメシコに由来するとされるが、諸説あるようだ。


日本に導入されたのは、大正時代末期から昭和初期、戦後にかけてとされるが、当時は人気があったわけではないようです。

メキシコ系、グァテマラ系、西インド系があり、日本にはフエルテ、ハスなどの品種の実が輸入されています。




ギネスブックには「最も栄養価の高い果物」と記載されている。

「森のバター」「果物のバター」とも言われるほど脂肪が多いが、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸が主体なので、健康に良いものです。

❉不飽和脂肪酸=(ふほうわしぼうさん)とは、脂肪の構成要素である脂肪酸のうち、植物や魚の脂に多く含まれるもので、常温では液状で植物油に多く含まれています。

老化防止効果のあるビタミンEが多く含まれ、カリウムも豊富なので血圧を低下させる効果もあります。

そのため「果物の王様」「生命の源」とも言われる。


ワサビ醤油をつけると、マグロのトロの味がすると言われています。


脂肪の燃焼にもよく、ダイエットにもおすすめの食べ物ですが、果物の中でもカロリーが高い部類であるので、食べすぎるとニキビの原因にもなります。

腹痛や下痢、胃痛、胃もたれなどの原因になることがあるので注意が必要です。


1日二分の一から一個程度を目安に食べると良いとされています。


アボカド一個はごはん(150g)一杯分のカロリー(234kcal)に相当します。


アボカドのカロリーは一個150gで263kcal








2022/09/14

植物の細胞が持つ能力 No,609

 新たに芽生える植物細胞の能力

樹木は材木として利用されたり、間引き(間伐)のために地上部を幹の根元(基部)で伐採されることがあります。

しかし多くの場合、伐採されたとしても樹木の切り株はそのまま生涯を終えることはありません。

地上部の幹を切られても土の中で根が生きているので、水や養分が運ばれ、残された切り株から芽が再び出てきます。


再び切り株の幹から出てくる芽生えは「ひこばえまたはやご」と呼びます。

「ひこ」とは孫のことでひこばえは「孫が生えてきた」という意味になります。

このひこばえには、そのまま樹木として成長できる能力があります。

しかし、なぜ芽のない切り株からひこばえがでてくるのか?

これには、幹を作っている細胞が持っている能力によるものです。

植物の細胞はそれぞれ、部位にふさわしい形や働きをしていますが、更にそれぞれの個体が1つの個体を作る能力を持っているのです。

その能力を『分化全能性』という。

植物の細胞が分化全能性を持つことは、1958年にアメリカの植物学者F.C.スチュワード等によって示されました。

スチュワードは、人参の食用部である根を構成する1個の細胞を取り出して、人工的に用意した適切な条件のもとで育てました。


すると、細胞が増殖して細胞の塊(かたまり)になりました。

これは、根や茎の一部になっていた細胞が分化していない状態に戻ったもので「カルス」と呼ばれます。


  「樹木のカルス形成、切り口を塞ぎ始める」


更にこのカルスを適当な条件でそだてると、カルスから根、茎、葉などが作られてきて、完全なニンジンの植物体が出来上がったのです。

こうして、一個の細胞からでも植物の体は再び作り上げられることが分かりました。

これが細胞の持つ分化全能性と言われる能力です。


つまりひこばえは、切り株の断面にある細胞が分化全能性によって芽を出したものなのである。

このひこばえは、切り株の中央部分からはほとんど生まれず、切り株の周囲から多く出ます。


それは切り株の周囲には若い元気な細胞があり、切り株の中央部分は歳を重ねた古い細胞でできているからです。

    「切り口の周りから出る新しい芽」


植物の細胞の分化全能性は、茎や枝を切っても水の入った容器に挿しておくだけで、発生を見ることができます。

日が経つと、茎や枝の切り口から根が生え出てくる植物は多くありません。

本来なら根を出すはずのない茎の切り口から、新しい根が、生まれてくるのです。

この力を利用したのか「挿し木」です。

分化全能性という能力が挿し木を可能にしているのです。


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No,604












2022/09/12

腐植物質の機能 N0,608

 土壌の腐植物質

腐植物質とは生物の死後、生物体有機物かを微生物的、化学的作用を受けて崩壊して生じた、非生体有機物の総称とされる。


腐植物質は、植物残渣や微生物遺体が土壌中で微生物による分解を受け、その解産物から化学的、生物学的に合成されます。

合目的性(ごうもくてきせい)

合目的性とは、物事のあり方が一定の目的にかなった仕方で存在していることである。


腐植物質は多くの生体高分子(生物の細胞が作り出す天然の巨大な分子)と異なり、一定の目的にかなって合成された物質ではないことが大きな特徴であり、微生物の利用残渣と言っても過言ではない。

❉残渣(ざんさ)とは、ろ過したあとの残りかすのこと

一定の目的を持つことなく生成した物質の例として、石炭がある。

石炭は植物遺体を起源とし、地下深くで「埋没続成作用」を受けて生成するため、官能基(原子(団)がほとんど含まれていない。

❉埋没続成作用とは、堆積物が固まって堆積岩なる作用のこと


しかし腐植物質は同じ植物遺体を材料とするが、地表の酸化的な条件で生成するための多量の酸性原子を持っている。

陸上の自然生態系では、常に新たな植物遺体が土壌に加えられます。

土壌表面に堆積した植物遺体に含まれる糖類、ヘミセルロース、セルロース、タンパク質などは、微生物によって分解され、大部分は水、二酸化炭素、アンモニアになる。

分解過程で、植物成分のごく一部が低分子有機物となり、長時間を経て腐植物質が合成されます。

生成された腐植物質は、腐植を含んだ無機質成分と結合して、微生物による分解に対して抵抗性を持つようになる。

新しい腐植が土壌に加わることで、腐植物質の更新が行われる。

しかし、無機成分と結合した腐食と言っても、全く微生物に分解されないわけではありません。

新しく生成した腐植物質は、すでに土壌中に存在する腐植物質に比べて、再び微生物に分解されやすい部分が多い。







2022/09/11

土壌のアルミニウム毒性 No,607

 アルミニウムの毒性

アルミニウム毒性は、植物細胞の複数の過程を阻害することが知られています。

阻害作用は様々であるが、どの作用が生育阻害の引き金になるのかは明らかになっていない。


アルミニウムに対する感受性は植物種や品種によって大きく異なるが、一部の植物は酸性土壌を克服するため、様々なアルミニウム耐性機構を発達させている。

その耐性戦略は2種類に大別される。

①1つは、根から根圏へ有機酸を分泌し、根圏でアルミニウムをキレートして無毒化する戦略である。

❉キレートとは、クエン酸の作用のこと
❉根圏(こんけん)とは、植物体の根とその影響を受ける土壌中微生物の活動などによって作られる、極めて根に近い範囲を指す。
植物体を維持するための土壌空間である。


分泌する有機酸の種類は、植物種ごとに異なる。

植物のモデル生物として有名なシロイヌナズナ、アブラナ科の一年草(ペンペン草の仲間)はリンゴ酸とクエン酸を分泌する。

イネ科の作物の中では、小麦はリンゴ酸をそしてイネ、大麦、トウモロコシはクエン酸を分泌する。

ライ麦はリンゴ酸とクエン酸の両方を分泌する。

また、蕎麦など一部の植物はアルミニウムに応答して、硝酸を分泌する。

❉硝酸(しょうさん)は無色透明の腐食性の強い有害な液体。

❄リンゴ酸はオキシコハク酸ともいわれ、和名はリンゴから見つかったことに由来する。


ヒドロキシ酸に分類される有機化合物の一種、アルファヒドロキシ酸(AHA)はフルーツ酸などと表記されることもある。

ヒドロキシ酸は、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの総称である。


クエン酸は柑橘類、梅干しなどに含まれている酸味成分の有機化合物。


②もう一つの戦略は、植物体内での耐性機構である。
細胞内に侵入したアルミニウムを液胞に隔離し、有機酸で「キレート」するなどして無害化する。

アジサイなどの一部の耐性植物は、積極的にアルミニウムを吸収し、地上部へと「転流」して蓄積する「アルミニウム集積植物」であることが知られています。

❉転流とは養分の移動(長、短距離輸送)のこと

篩部(しぶ)における転流には明確な方向性があり、転流の出発点を「ソース」到達点を「シンク」と呼ぶが、成熟した葉で光合成をして生育途中の葉に光合成産物を送っている場合では「成熟葉がソース」「未熟葉がシンク」と例えることができる。

◉篩部(しぶ)とは、植物の維管束を形成する、篩管を中心とする部分。

維管束(いかんそく)はシダ植物と種子植物にあって、篩部と木部からなり、道管、仮道管、篩管などを含む組織の集まり。


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熱帯雨林の土壌と植物生育環境
No,606









2022/09/10

熱帯雨林の土壌と植物生育環境 No,606

 熱帯雨林の土壌と植物

ブラジルの土壌は、『ラテライト』と呼ばれる粘土質の鉄やアルミニウムが多く残留している赤色の土壌で、日本語では紅土(こうど)という。

『ラテライト』とは、地表の風化物として生成された「膠結(こうけつ)物質」である。

軟らかい未団結の堆積物で、その沈殿物を膠結物質という。
また、セメントを膠結物ともいう。

ラトソルやラトゾルとも呼ぶ。
脱水すると吸湿しにくくなるなどの特徴を持っており、堆積物は団結して硬くなり石化する。


植物にとって肥沃な土壌とは言えません。

アマゾン熱帯雨林の肥沃な土壌での、熱帯の樹木は生長に従って「板根」という特殊な板状の根や、ガジュマルのような「支柱根」と言われる根を伸ばし、地上にその姿を現します。


◉板根(ばんこん)
熱帯雨林では多雨による土壌の流出により、土壌がほとんど存在しません。

そのため大木は、幹を安定されるために根を横方向に生長させ、板根を形成しています。



✿サキシマスオウノキ(先島蘇芳の木)


先島地方で、材からスオウのような赤色の染料を採ったのでこの名がある。

板根の高さは2㍍以上もあり、根元まで海水が押し寄せてくるような海辺に生え、樹高は10㍍程になる。

果実は堅い木質で軽く、海水に浮かんで分布を広げる。



❄支柱根(しちゅうこん)

大木になると枝から気根を垂らし、地面に着いた気根は支柱根となって木を支える。



◉ガジュマル(榕樹=ようじゅ)

枝から多数の気根を垂らすので独特の景観になる。

海岸の隆起珊瑚の上などに生えるが、海辺に自生する多くは、地面を這うように伸び、一見すると草のようである。


熱帯雨林では地力を失い、そこに生える牧草には栄養素がなく、このような牧草では牛が肥えることもできません。

同様に農地としても作物が育ちにくい。

地力を失った所では、施肥をしながら地力維持を続ける必要がありますが、経費もかかるので継続的な管理も難しい。

地力のある熱帯雨林の開拓、開墾を続けて広げて行くことは、放置される土地も増え、荒廃となり、やがては森林破壊へと繋がっていきます。


酸性土壌は、熱帯や亜熱帯地域を中心に広く分布し、世界の耕地面積の3〜4割を占める典型的な問題のある土壌である。

酸性土壌での主な作物阻害因子は、アルミニウムイオン毒性です。

アルミニウム(Al)は地殻中に酸素、ケイ素に次いで3番目に多い元素であり、土壌中に広大に存在しています。

アルミニウムは、中性土壌では土壌鉱物に安定に保持されるため無害ですが、酸性土壌PH5.5以下ではアルミニウムイオンとして溶け出し、微量でも植物の根の伸長を速やかに阻害します。

その結果、植物の養分や水分の吸収に影響し、乾燥ストレスなどにも弱くなり、作物生産性の低下を招くことになります。

酸性土壌は世界各地に広く分布していることから、酸性土壌における生産性の向上は今後、食糧不足問題を解決するための鍵とされています。


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2022/09/09

カリウムの王様と言われる果物 No,605

 カリウムの王様と言われるバナナ

日本で最も食べられているのは、フィリピン産の「ジャイアント·キャベンディッシュ」という品種のバナナです。

東南アジアを原産とするバショウ科の植物で、単子葉植物ショウガ目に属します。

ショウガ科に似て熱帯を中心に分布しますが、比較的耐寒性は高い品種もある。

多くは高温多湿の環境に適応します。

果実が食用となるため、五千年以上前から、中南米、フィリピンなどの熱帯、亜熱帯地方で栽培されてきました。




「カリウムの王様」という呼び名はジャガイモに使われますが、この植物の果実にも使われます。

ポルトガル人が15世紀にバナナを発見し、大西洋を経てアメリカ大陸へ伝わり、世界で広く栽培されるようになったとされる。

日本で最初にこの果物を食べたのは、1969年、織田信長と言われていますが、それが正しいかは別として、日本でも古くから知られている果物です。

日本で正式に輸入が始まったのは1903年(明治36年)
で、その後、1963年(昭和38年)バナナの輸入が自由化され、台湾に加えエクアドルやフィリピンなどのバナナも流通するようになり、現在輸入バナナの約9割はフィリピン産である。

バナナはカリウムを豊富に含んでいる果物です。

カリウムには、ナトリウム(塩分)を排泄する役割があり、高血圧やむくみの解消、運動中の筋肉が痙攣(けいれん)するのを防ぐなど、様々な効果が期待できます。

一方で、カリウムを摂りすぎると、手指や唇のしびれ、全身のだるさ、不整脈などの症状が現れ、心臓が止まってしまう原因にもなります。

よって、カリウムを多く含む果物、野菜、芋類、干し物等やタンパク質の摂りすぎには特に注意が必要となる。

また、腎不全などで腎機能が低下するとカリウムがうまく排泄されなくなり、高カリウム血症になる。

食物繊維が多く含まれ、低カロリーであるため、ダイエットで食べることもありますが、摂取量には注意しましょう。







2022/09/08

植物はなぜ立っていられるの? No.604

 植物の茎や幹には立つ仕組みがある

植物には人間のような骨がありません。

どうして植物は骨がないのに立つことができるのでしょう。

一般に植物は、根が地上部を支えていることと、茎や幹が立つこととは別なものです。


        「コルクガシ」


植物の細胞の仕組み

植物は体のすべての部分が細胞というものからできています。

植物の細胞は1665年にイギリスの物理学者「ロバート・フック」により見つけられました。

フックは、ワインの瓶の栓などに使われるコルク素材に「なぜ他の木材にない軽くて柔らかく弾力があるのか」と興味を持ちました。

コルクは南ヨーロッパ原産の『コルクの木』と呼ばれる「コルクガシ」の樹皮から作られています。

フックはコルクを薄く切り、自作の顕微鏡でコルクを観察し、その結果、コルクはハチの巣のように中が空洞になっているたくさんの小さな部屋からできていることを発見しました。

そして、この小さな部屋のようなものにセル(cell)と名付けました。

これが日本語で言う「細胞」のことです。

しかし、フックが細胞を見つけた当時は、この小さな部屋のようなものが、植物の体を作り上げる基本的なものになっているとは認識されなかったのです。



❉ロバート・フック(1635〜1703)
フックは非常に多彩な研究者であり、生物学や物理学など多方面に業績を残している。

アイザック・ニュートンに消された男
(ニュートンに消された男、角川ソフィア文庫)

17世紀の時代に活躍したフックですが、しかし、彼の肖像画は1枚も遺されていない。

それは死後にニュートンが彼を学界から消して行ったかである。


時が過ぎ、約170年後の1838年になってようやく、ドイツの植物学者「シュライデン」が“植物の体は細胞からできている”と唱えたのです。



❉マティアス·ヤーコブ·シュライデン
(1804〜1881)現ドイツハンブルク出身元弁護士
シュワンと協力して、生物の細胞説を提唱した先駆者で、ドイツの植物学者。


更にその翌年、シュライデンの友人であるドイツの動物学者「シュワン」が“動物の体も細胞からできている”と提唱しました。



❉テオドール・シュワン(1810〜1882)
現ドイツ、ノイス出身の生理学者、動物学者

解剖学的な研究業績も残している。
神経繊維を研究して軸索=じくさく(神経細胞から電線状に伸びる長い突起)を包む鞘(さや)を発見した。

今日「シュワン細胞」と呼ばれている。



この二人の研究者の考えが基になって、細胞が植物や動物の体を作る基本単位であるとする、細胞説が確立されたのです。

その後、細胞説には「すべての細胞は細胞から生じる」という考えが加えられました。


しかし、植物細胞と人間などの動物の体を構成する細胞とは大きな違いがあります。

動物の細胞の外側は細胞膜という薄く柔らかい膜で包まれています。

一方、植物の細胞も細胞膜に包まれていますが、更にその外側には「細胞壁」という厚くて丈夫な壁に囲まれいます。

動物の細胞には細胞壁はありません。

動物にはない厚く強固な細胞壁を持つ植物は、細胞内にある核や葉緑体などを保護する働きをしますが、植物の体を支える働きもしているのです。

細胞壁の主な物質は「セルロース」ですが、さらに「リグニン」という成分を含むことにより、細胞壁をより硬くしている。


茎や幹はこのリグニンを多く含んだ、硬い細胞壁を持つ細胞を積み重ねて立っているのです。

よって、骨がなくても立つことができるのです。

セルロース

植物の細胞壁及び繊維の主成分で、植物はすべてセルロースを主構成成分として含んでいる。

地球上で最も多く存在する炭水化物です。

このセルロースが病菌(腐朽菌)などに侵入されると、樹は枯死してしまう。

白色腐朽型では、セルロース、ヘミセルロースそして、リグニンのすべての木材成分が分解され、灰白色から白色となる。


リグニン

セルロースなどとともに、高等植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物であり、「木質素」とも呼ばれる。

木材中の20〜30%を占め、セルロースと結合した状態で存在する。

「木材」を意味するラテン語(lignum)から命名された。


コルクガシ

ブナ科コナラ属の常緑高木
スペインを中心とする南ヨーロッパ原産

幹の肥大生長とともに、樹皮の中にコルク層が10cm以上にも発達する。

関東地方南部以西で一部植栽されている。



         「コルクガシ」


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No,609











2022/09/07

食べる風邪薬 春菊 No,603

 春菊 キク科

原産地=地中海沿岸

欧米では観賞用に栽培されるが、日本や中国では野菜として栽培される。

中国の宋時代(宋は北宋、南宋と区別される)に日本に渡来した。

中国では炒めものにするのが定番とされ、風邪の予防に効果があることから、漢方では「食べる風邪薬」として用いられている。







春菊は、ほうれん草よりも栄養価が高い成分もある「優秀野菜」です。

特に、喉や腸などの粘膜を健康にするベータカロテンかを多く含まれている。

疲労回復やエネルギーを作り出すために必要なビタミンB群、ビタミンC、カルシウム、妊娠中に特に必要な❉葉酸や鉄、カリウムや食物繊維が含まれています。


❉葉酸はビタミンB群の水溶性のビタミンで、プチロイルモノグルタミン酸及びその枝分かれ(派生物)の総称です。


ビタミンB12とともに赤血球を作るので「造血のビタミン」とも言われています。

DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(核酸=リボース、五個の炭素原子を含む単糖)などの核酸やたんぱく質の合成を促進し、細胞の生産や再生を助ける。

1941年に、乳酸菌の増殖因子としてホウレンソウの葉から発見されました。


✿非結球性

小松菜等の丸く結球しない「三大非結球野菜」の1つにあげられます。

レタス、ハクサイ、ホウレンソウ、チンゲンサイなど
葉が広がっているものを非結球性といい、キャベツなどの丸く固まったものを結球性として分類される。


葉っぱに含まれる独特の香りの成分は、ピネンやペリルアルデヒドなどと言われます。

春菊の苦味は茎や葉に多く含まれ、苦味のもとであるポリフェノールが加熱することによって細胞から出てくるので、加熱する時間が長くなると苦味も強くなっていきます。


春菊は種子を播いてから約2ヶ月で収穫できます。

株の上部の葉っぱをつけた茎を切って収穫し、株の下部を残しておくとまた、茎や葉っぱが出てくるので再び収穫できます。

上手く栽培すれば、一株で年に7回程収穫できるとも言われています。







2022/09/06

品種登録された植物の栽培、繁殖の注意点 No,602

 植物を殖やす前に注意すること

園芸の楽しみ方は色々ですが、その中のひとつとし、
植物を殖やすことを楽しむ人も多いことでしょう。

高度な技術を持つ園芸愛好家であるなら、ある品種とある品種を掛け合せて、新しい形や色の花や葉をつける品種を、作り出す楽しみ方もあると思います。

また、殖やした植物をフリーマーケットで売ったり、道の駅で売るといった人もいるようです。

そんな楽しいことが一歩間違えば、知らずしらずに法律違反をしてしまう可能性があります。


◉種苗法

販売されている園芸植物の中には「登録品種」という種苗法に護られている品種があります。


この法律は、園芸業界が発展するよう定められたものです。

新しく作られた品種を保護することで、新品種の育成を活発化させ、それらの新種苗が適正に流通されるようにしているのです。


つまり、発明特許のような扱いです。

自分が作ったオリジナルの植物品種を「勝手に殖やされて世の中に広く流通しないように」育成者に配慮されている法律なのです。


作り手である育成者は、新しい植物の品種を作り出すと、農林水産省に行って、「この花を作ったのは自分なので、許可なく殖やしてはいけない」とするための品種登録を行います。


登録が認められた品種は、育成者が作り出したものであると主張できるので、育成者は登録品種の栽培、繁殖について許可を下す権利を得ます。

よって、育成者の許可を得ないと殖やすことができないので、植物が登録品種なのかどうかを把握しながら、栽培する必要があります。

殖やして人にあげた植物が、「法律違反になる品種」だったということが起きるかもしれません。

ただし、自分でオリジナルの品種を作ろうとする場合には、登録品種とそうでない品種を「かけ合わせる時」には、使用しても問題ないとされています。


✪品種登録の期限

育種者権の存続期間は、登録日から25年又は30年とされています。

ただし、存続期間内であっても定められた期間内に、各年分の登録料が納付されない場合や、品種登録の要件を満たしていなかったことが判明した場合、品種登録後に植物体の特性が保持されていない場合には、品種登録が取り消されます。


◉登録品種を見分ける方法

ラベルや種子袋をよく見ると、「農林水産省種苗発録(品種登録申請番号)第⚪⚪号」や「品種登録出願中、または準備中」などの記載がされています。






記載がなければ登録品種ではないということになります。

また、登録品種であることが分かりやすいマークがあります。

登録品種表示マーク(PVPマーク)と言うものです。

PVPとは、Plant Variety Protectionの略で、植物品種保護という意味です。




このマークはこれまでに、法律によって使用を義務付けされていませんでしたが、令和3年4月1日より、登録品種であることの表示が義務化され、これに伴い、これまで植物品種保護戦略フォーラムで推進してきた、「PVPマーク」が登録品種の義務表示の選択肢として利用できることになりました。

PVPマークは登録品種であることを示すマークになりますが、「登録出願中」の品種には使用できなくなるので注意が必要です。


✪令和4年4月1日から出願料が1,4000円になりました。

❉PVPマークの使用に関する情報は農林水産省のサイトへ

参考ホームページURL

(令和4年4月1日以後のホームページ)

農林水産省品種登録ホームページ

http://www.ninshu2.maff.go.jp








2022/09/04

ベリー類の魅力 No,601

 いろんなベリーを育てるために

ベリーとは多肉多汁で、食用としても利用される小さな果実の総称です。

代表的なものには、よく知られるブルーベリーやラズベリーがありますが、他にもグーズベリー(スグリ)、マルベリー(クワ)、ハスカップ、グランベリー、カシスなどがあります。

名前に「ベリー」とつくと同じ仲間のように思われますが、それぞれ違う分類群に属しています。


ブルーベリーはツツジ科スノキ属、ラズベリーはバラ科キイチゴ属になります。

小低木で育てやすいところがベリー類の魅力であり、鉢植え栽培にも適し、またベランダでも栽培が可能であることも親しまれる理由です。

場所によっては無農薬栽培が可能であり、安心して食べることもできます。

ジャムやフルーツソースなどに加工し、さまざまなデザートに利用できます。


完熟した果実は抗酸化作用があるので、成人病予防などに効果があるとされます。

アントシアニン色素などのポリフェノールが多く含ませていることから「健康食品」としても魅力あるものの一つです。


✿ブルーベリー

ブルーベリーは北海道から九州まで100種類以上の品種が栽培され、ハイブッシュ系とラビットアイ系の2つの系統に大きく分類されていましたが、現在では種類も約200〜300品種に増え、ハイブッシュ系が2つに分かれた事で、ラビットアイ系、サザンハイブッシュ系、ノーザンハイブッシュ系の3系統になった。


栽培地の目安として関東以北の方はハイブッシュ系、関東以南の方はラビットアイ系やサザン、ハイブッシュ系が適しています。

①ラビットアイはやや小粒だが実付きがよく多収穫

②サザンハイブッシュはやや小粒で甘味が豊か

③ノーザンハイブッシュは大粒で酸味と甘味のバランスが良い

ブルーベリーを収穫するなら2品種植えないと、実を収穫できなかったり、収穫量がかなり減ったりします。

特に、ラビットアイ系のブルーベリーは自家受粉できないので、1品種だけを栽培しても結実しません。


一般的に、ハイブッシュブルーベリーは早生(わせ)の品種が多く、食味がよく、大粒の果実を収穫することができます。

一方、ラビットアイブラックベリーは、樹勢が強く、晩生(おくて=遅く成熟する品種)のものが多く、やや果実が小さいのですが、アントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれています。


     「ブルーベリーの花」

✪苗の植え付け

秋から早春にかけて苗を購入することができます。

枝が太く、枝の艶が良いものを選ぶと良いでしょう。

初めてブルーベリーを植える方は、冷涼な地域では北部ハイブッシュブルーベリー、九州のような温暖な地域では、ラビットアイブルーベリーを選ぶと良いでしょう。

植え付けは他の落葉果樹と同じく、芽や根の成長が止まっている休眠期に行うが、1月から2月の極寒期での植え付けは避けます。

日当たりと水はけの良いところを選び、用土は排水性、水持ちの良い酸性土壌を使用します。

特に、酸度未調整のピートモスをたくさん入れるとよく育ちます。

庭植えは直径50cm、深さ30cm程度の植え穴を掘り、掘り上げた土3、吸水させたビートモス5、赤玉土小粒2の割合で混合して使用します。

苗はポットから抜き、根鉢をしっかり崩します。

この作業を行わないと根鉢から新しい根が出ません。

吸水させたピートモスで根を包むようにして、植え穴に入れ、混合した土を埋め戻します。

植え付け後は、苗が倒れないように支柱を立てて固定し、水をたっぷり与えます。

最後に元肥として、油かすなどの有機質固形肥料を一株当たり3〜4個置く、または化成肥料50g程度を与えます。


✪🚰水やり、施肥

庭植えは、定植した年の4月から9月までは週2回程度、それ以降は表面の土が乾いたら水やりを行います。

ブルーベリーは、一度水を切らすとなかなか回復しないので、夏の水管理は特に注意する必要があります。

株元にバークチップやもみ殻、ワラなどを敷くなどして、乾燥を防ぐためのマルチングを行う。

肥料は萌芽が始まる前の3月までに、元肥として有機肥料を与えます。

5月から6月には実肥(みごえ)として与え、9月から10月にはお礼肥えとして化学肥料を施します。

肥料散布は株元ではなく、樹の枝の広がりよりも広く周りに施しましょう。

✪病害虫

病気では開花期に花房にカビが発生する灰色かび病があります。

市販の殺菌剤などを散布して防除します。

害虫は春から初夏にかけてアブラムシやイラガが発生するので、適期に殺虫剤を散布し駆除します。

土の中ではコガネムシの幼虫が根を食害し、成虫は若木の葉を食害します。

成虫は動きが鈍い早朝に見つけ次第捕殺します。

成虫の発生期には、株を防虫ネットで覆い産卵を防ぎましょう。


❉ブルーベリー関連記事ブルーベリーの話 No,559



✿ラズベリー、ブラックベリー、デューベリー(キイチゴ=木苺)バラ科キイチゴ属

ヨーロッパと北アメリカ原産のラズベリー、北アメリカ原産のブラックベリー、デューベリーから改良された3種類があります。

低木性の果樹で種類が多く、日本では山野に自生しているものもある。

栽培されるのは輸入種のラズベリー、ブラックベリー、デューベリーの3種で、種類によって適温が違い、ラズベリーは耐寒性が強く、夏も涼しい気候を好みます。

ブラックベリー、デューベリーはやや耐寒性に劣りますが、関東地方までなら庭植えで十分育ちます。


国内でのラズベリー栽培が冷涼な東北地方などの一部で見られますが、殆どは家庭果樹として親しまれています。

多彩な色の果実があり、ジャムやフルーツソース、ケーキの彩りなど、多様な加工食品に利用されます。

西日本のような温暖な地域では、ブラックベリーが適しています。


    「ラズベリーの花」

✪苗の植え付け

苗は秋から早春にかけて購入することができます。

苗木は株分けや挿し木で殖やした1年から2年苗が殆どで、茎が太く根がしっかりポット内に張っているものを選ぶと良いでしょう。

植え付けの適期はブルーベリーと同じく休眠期に行いますが、極寒期の1月から2月は避け、3月ぐらいに行います。

暖地では秋植えでも根の活着がよく、9月から11月にも植えることができます。

日当たりがよく水はけの良いところが適していますが、暖地では半日陰程度の場所の方が良いでしょう。

❉植え付け時に根を乾かさないように注意しましょう。

ラズベリーを庭植えする場合は、直径40cm、深さ30cm程度の植え穴を掘り、掘り上げた土を5として、腐葉土3、赤玉土小粒1、堆肥1の割合でよく混合します。

掘った穴に混合土を3分の2程度まで埋め戻し、浅めに苗を植え付けます。

枝の3分の1程度を切り戻し、支柱を立て苗木を固定します。

元肥として化成肥料50g程度を置いて出来上です。


✪🚰水やりと施肥

庭植えの場合は、土の表面が乾いている場合に行う程度で、最初に十分水やりをしていれば問題ありません。

肥料は萌芽が始まる前の3月までに元肥として、化成肥料を一株当たり50g程度与え、5月から6月と8月から9月には追肥として、一株当たり25g程度を施します。

✪せん定

ラズベリーは他の果樹とは異なる習性を持っているので、せん定には注意が必要とされます。

ラズベリーの花芽は「混合花芽」といって、ブドウのように1つの芽の中に葉芽と花芽の両方を持っています。

一般的な花芽分化期は、「一季なり性」で7月上旬から中旬と言われています。

ラズベリーには一季なり性と二季なり性があり、一季なり性種は春に、地下茎から出てくるサッカーや株元から発生するシュートのような一年枝が伸長して、冬期の低温に遭った後に2年枝(結果母枝)となって、翌春に2年枝の芽から伸長する、結果枝の先端に果実が着きます。

この2年枝と結果枝は結実後、冬までに枯死してしまいます。

一方、「二季なり性」は、2年枝から発生した結果枝の先端に果実(春果)が着きます。

ラズベリーのせん定は1月から2月に行い、果実をつけたすべての枝をもとから切り取ります。

枯れこんで枝が灰色になっているので識別はしやすい。

秋に果実がついた枝には、翌年に果実が着くので切り取らずに残します。

残す2年枝を決めて、枯れた部分があれば切り取ります。

側枝は1〜2芽を残して切り詰めますが、周辺の広さが十分ある場合は、2芽以上残しても良いでしょう。

側枝を切り詰めるのは春に結果枝が30cm以上伸びるので、株全体のバランスを取るために行います。


   「ブラックベリーの花」


せん定後は、実が生ったときの姿を考えながら支柱やトレリス(格子垣)などに誘引します。

実が着くと枝が重くなるので、しっかり固定します。

また、ラズベリーやブラックベリーには匍匐性(這う)の種類(ポイセンベリーやマートンソーンレス)もあり、特に仕立てやすい。

壁の上から垂らしたり、ハンギングバスケットやトレリスを利用したり、個性的な栽培方法も楽しむことができる。


✪病害虫

キイチゴの仲間は病害虫がつきにくいとされるが、地域によってはマメコガネ成虫による葉の食害や、ダニ類が発生するのでなるべく捕殺や除去を行う。

風通しが悪く、温度が高いところでは灰色カビ病が発生するので、夏期せん定を行い、樹幹内に日光が当たるように風通しを良くすることが予防となる。

3月の発芽前に、石灰硫黄合剤20倍液を散布して病害予防を行います。









2022/09/03

地球上に酸素を作り最も長く生きてる生物 No,600

 地球上に最初に酸素を生み出した生物

シアノバクテリア 藍藻(らんそう)細菌
No.600記念記事

約35億年前の地球の大気は96%が二酸化炭素で、酸素はありませんでした。

地球のはじめは水蒸気と二酸化炭素というガスに覆われていました。

海の中に溶けた二酸化炭素と太陽の光から、酸素を生み出したのは『シアノバクテリア』と呼ばれる細菌です。



  「緑色に粘ったようなシアノバクテリア」



シアノバクテリアは、酸素発生を伴う光合成(酸素発生型光合成)を行う細菌の一群である。

藍藻(らんそう)は系統的には細菌類に属する『原核生物』であるが、歴史的には「植物」に分類されていました。

『原核生物』とは、前核生物、原生核生物ともいう。

細菌および藍藻に代表される生物のことで、染色体はDNA分子がほとんど裸のまま、細胞のほぼ中央部にあるが、核膜(細胞核)はなく、構造的に細胞質から区別できない。

原核生物はすべて単細胞で、原核菌類と藍藻植物が含まれ、34億年前の藍藻の化石が発見されており、生物の進化では最も古い生物であると考えられています。

また、ミトコンドリアなどの構造体がありません。

シアノバクテリアは藻類に分類されていたことから、国際細菌命名規約ではなく、国際藻類、菌類、植物命名規約に基づき分類されてきました。

約30億年前に地球上に大量発生したシアノバクテリアにより、大量の酸素が供給され、現在の地球環境が形成されたと考えられています。


現在でも海、川、湖沼、氷河にまで、地球上の至るところに分布する。

地球上で最も長く生き続けている生物なのである。


植物がなくなったら地球はどうなるの?

今の時代ですでに地球上から酸素がなくなってしまう、豊富である状態は約10億年であると明らかにされています。


植物は人をはじめとした動物の食料となり、命を繋ぐために欠かせない存在です。

植物は食物連鎖の中では動物より下位に位置づけられます。

そのため、植物の量が減少してしまうと動物が生てく上で影響がでます。

植物の減少に伴って酸素の供給量も当然減るので、そのような状態になれば、その影響は計り知れない事になるでしょう。

森林の木がなくなれば、そこに生きてる多くの動物や昆虫などの餌がなくなるため絶滅し、光の弱いところでしか生育できないシダやコケなどの植物も全滅することになります。


海岸沿いに生育するマングローブの林もなくなれば、そこで生きている魚たちの居場所も失ってしまいます。

海への栄養源も途絶える事になり、海洋生物への影響も当然起きてくることになります。

生物や植物が生きるために必要な自然環境が破壊され、なくなってしまうことは、人類への生命線もなくなってしまうということに繋がっているのです。

小さな、小さなバクテリアによって生物も、動物も生きられる地球がうまれ、そのはじめを作ったバクテリアは今も尚行き続けていることは奇跡以上かも知れません。

人類ができることは自然環境をできるだけ保護すること以外ありません。


地球全体の水や空気がきれいな状態で保てるのも、植物たちの力であることは紛れもない事実です。







2022/09/02

戦後も生き続ける戦災樹木たち No,599

 巨樹が問いかける戦争と平和

第二次世界大戦中、100万本以上の巨木が一年くらいの間に伐採され、木造船などに使われた。


戦争が多くの巨木を切り倒したのである!


空襲の惨禍を潜り抜け、その傷痕を今も伝える「戦災樹木」が東京の各地に存在している。

樹齢500〜600年と推定されるその樹は、約10万人が犠牲になった1945年(昭和20年)3月10日の東京大空襲による火災で焼け、黒い焦げ痕を今も見ることができる。


     「飛木稲荷神社のイチョウ」

所在地=墨田区押上2丁目39-6

東京都墨田区の飛木(とびき)稲荷神社境内に立っている天然記念物のイチョウの木である。

物言わぬ戦争の生き証人である。


当時、自宅近くの空き地に避難していた田中稔さんは、イチョウの木が炎に包まれる様子を鮮明に覚えていました。

最初は神社の社務所の裏から燃え始め、それから本殿、神楽殿と燃え広がり、そのうちご神木のイチョウにも火が移って、葉がない落葉期だったので燃えやすく、すぐに燃え上がったと言う。

焼け焦げてしまったイチョウの木は、数年後には新しい芽を出し、そして今も同じ場所に立ち続けている。

大田区の新田神社にあるご神木のケヤキは、幹の表面が大きく裂け、焼け焦げた痕が見られるが、今も生き続けるその生命力ある樹に触ると、ご利益が得られるとされ、パワースポットとして地域の人から親しまれています。


       「新田神社のケヤキ」

所在地=東京都大田区矢口1丁目21


東京大空襲などの空襲で被害を受けた「戦災樹木」は東京23区にどれだけ残っているのか調査され、202本在ることがわかりました。

一方で、判断できない樹木も多く存在します。

空襲によって焼失した地域と重なるように点在し、被害が甚大だった下町一帯で、その数は多く見つかっている。

湯島聖堂や上野公園、富岡八幡宮など、大規模な緑地がある場所にまとまって存在している事も確認されました。

戦後、長い時が流れ、町並みも大きく様変わりした東京で、200本以上の樹木が残っていたのです。

なかには、戦災樹木としての証言が得られなかった樹木も150本にものぼっているが、判断できぬまま伐採される樹木もある。


戦災樹木は、当時何があったかを今に伝える身近な存在でもある。

調査と保護がますます必要となっているのではないだろうか。

しかし、文化や芸術に乏しい傾向のある日本では、確実に護られていくという確証はないかも知れません。


広島、長崎市では原爆で被爆した樹木の保全が進んでいる。


広島市は1996年度から、被爆樹木の登録制度を開始し、爆心地からおよそ半径2キロ以内で、被爆樹木約160本を被爆樹木として登録し、定期的に樹勢を観察、調査を行っています。

被爆して今も生き続ける「アオギリ」という落葉樹が、広島平和記念公園の一角に存在しています。


       「被爆樹木、アオギリ」

所在地=広島市中区中島町1-2
広島平和記念公園


平和記念公園は戦前からある公園ではなく、戦後新たに作られた公園で、幕末から明治、大正にかけてこの場所は繁華街であったと言われています。


長崎市には今も生き続ける「被爆樹木」が存在する。

1945年8月9日に投下された原子爆弾で被爆し、今尚その場所に立ち続けているクスノキ


       「山王神社の大クス」

所在地=長崎市坂本2丁目6

長崎クスノキプロジェクトは、長崎の「被爆樹木」の保全、保護を行っています。


長崎市では46本の樹に年一回の健康診断を実施している。
被爆樹木の所有者に保存整備費を補助する制度がある。

個人所有の樹木にも被爆した樹木を紹介する表示板を設けています。

将来に渡り、被爆の悲惨さを伝え続ける貴重な遺構として大切に保存すべきだと、被爆樹木の保全の意義を唱えています。


空襲や原爆の傷痕を残す樹木は、戦後の「生き証人」としてこれからも戦争とはなにか?真の平和とは何であるかを問いかけ続けることだろう。









2022/08/31

柑橘類の名前につく「ポン」の意味 No,598

 名前に“ポン”のつく柑橘類

ポンカンはインドのスンタラ地方が原産で、インド、ネパール、東南アジア、中国南部、台湾、日本で栽培されています。

日本には1896年(明治29年)に台湾総督に就いていた樺山資紀大将が、苗木を郷里の鹿児島に送って移植したのが最初だとされている。


✪樺山資紀(かばやますけのり)は日本の海軍軍人で政治家、鹿児島の生まれ(1837=天保8年〜1922=大正11年)

薩摩藩士、橋口与三次の三男として生まれ、1863年、樺山四郎左衛門の養子となった。

幼いときの名前を覚之進という。


         「樺山資紀」


日清戦争(1894〜1895)では、海軍軍令部長として戦場に行き、手柄を立て、翌年には海軍大将となる。


その後、初代台湾総督、内務大臣、文部大臣を歴任し、86歳でこの世を去った。


名前に「ポン」がつく柑橘類には数種があり、その由来もさまざまです。

『ポンカン』は英語ではポンカンオレンジと呼ばれ、漢字では[椪柑または凸柑]と書きます。


         「ポンカン」

ポンカンの「ポン」は、原産地のインドの地名「ポーナ=pona」に由来します。

『デコポン』という愛嬌のある名前の柑橘類は、1972年に生まれました。

元々、デコポンの正式な品種名は生産が始められた地方の熊本県の「不知火=しらぬい」という品名で、デコポンの名前は商標登録したものです。


デコポンの「デコ」は「おでこ」のことで、突き出た状態を表しています。


         「デコポン」

おでこがポンと出ているという意味ではなくデコポンの「ポン」はデコポンの片親であるポンカンの「ポン」という意味です。

もう一方の親品種は『清見オレンジ』です。

清見(きよみ)オレンジは、温州みかんと外国産のトロビタオレンジの交配によって誕生したもので、日本で育成、公表された最初の『タンゴール』です。

品種名の「清見」は育成地にある清見潟、清見寺に由来する。

ところによっては「清見タンゴール」と呼ばれることもある。

産地として知られる愛媛県や和歌山県が、全国の出荷量の8割弱を占めている。

✪清見潟とは、静岡県中部、静岡市清水の興津、清見寺門前の海岸を示す。

清見オレンジの片親である』『トロビタオレンジ』はネーブルから生まれたオレンジの仲間。

オレンジは遺伝的にみかんに近く、進化の途中でみかんから枝分かれしたとされる。

ネーブルオレンジの原産地はブラジルで、バイア地方に導入したセレクトオレンジの、枝変わりによりできたと言われています。

この種がアメリカに渡り、1870年、アメリカ農務省(ワシントン)で育成され、これがネーブルオレンジ品種群の元となったワシントンネーブルである。



『ポンジュース』という飲み物がありますが、ポンカンのジュースではありません。

みかんの産地である愛媛県で、みかん産業の発展のために1952年に発売された、果汁飲料がポンジュースです。

ニッポンイチ(日本一)のジュースになるようにと思いを込めて、当時の愛媛県の久松定武知事によって、ポンジュースと命名されたと言われています。

ポンと出てくるポンジュースならええなぁ~😅

また他にも「ポン」という名前が選ばれた理由として、フランス語のボンジュール(こんにちはの意味)の「ボン」の響きに似ているからとも言われています。


オランダ語で、柑橘類の果汁を「ポンス=pons」と言ったり、果樹栽培法を英語で「ポモロジー」ということも一因にあるとされています。

調味料には「ポン酢」がありますが、ポンカンやデコポンの「ポン」を使用して名前をつけたと思われ、ポン酢はポンカンの果汁から作られたものではありません。


ポン酢の語源はオランダ語のポンスであり、「ス」に日本語の「酢」を当てたものです。


ポルトガル語に由来する説もあるが、その場合でもポンに酢をつけたということです。

ポン酢は柑橘類の果汁という意味なので、ポンカンと関係があるわけではありません。


 「ポンカンの発祥地の記念碑熊本県不知火町」